ファイナンス 2022年6月号 No.679
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世界平和大観音像、十重の塔及び山門 94 ファイナンス 2022 Jun.近畿財務局 管財部こうした状況を踏まえ令和3年4月に「民法等一部改正法」や所有者不明土地の発生予防を目的とした「相続土地国庫帰属法」が公布され、相続又は遺贈により土地所有権を取得した相続人が、土地を手放して国庫に帰属させることが可能となった。新たな制度により空き地・空き家問題や所有者不明土地問題などの発生予防が期待できることや相続人が土地を手放し国庫に帰属させることが可能となることで、土地利用の円滑化が進むことが期待されている。近畿財務局(以下、「当局」という。)では、これまで相続税物納や国庫帰属など、様々な制度に基づき数多くの不動産を引受けてきたが、本稿では、当局がこれまでに経験したことがない、大規模かつ特殊な財産が国庫帰属に至った経緯や現状等について紹介する。1.はじめに昨今、特に地方では、人口減少などに伴う空き地・空き家問題や所有者不明土地問題など、いわゆる引き取り手のない不動産の問題が深刻となっており、地方自治体をはじめとした地域社会はその対応に迫られている。2.通称「世界平和大観音像」今回紹介する通称「世界平和大観音像」(以下、「観音像」という。)は、兵庫県の淡路島に所在する財産であり、当該地域を管轄する当局が担当することとなった。【財産の概要】所在地 兵庫県淡路市釜口字里2457番1ほか引受日 令和2年3月30日土 地 建 物 観音像(高さ約100メートル)十重の塔(高さ約32メートル) 山門観音像は、淡路島の北東部、兵庫県淡路市に所在する巨大な建物で、地元出身の事業家が昭和57年に観光施設として建設。観音像内部に美術館や博物館等が設置されたほか、敷地には山門や十重の塔などが設置され、当時は淡路島の観光名所として大いに賑わった。しかしながら、バブル経済崩壊後、観光客が減少し、加えて、平成18年に所有者の死亡に伴い施設が閉鎖され、以後管理者不在のまま放置されてきた。19,071.04平方メートル通称「世界平和大観音像」の国庫帰属及び処理について近畿

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