ファイナンス 2022年6月号 No.679
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202120202019201820172016201520142013201220112010200920082007200620052004200320022001200019991998199719961995199419931992199101990(出所)IMFWorld Economic Outlook April, 2022(参考 日本・米国・中国の名目GDPの推移)(10億ドル)25,00020,00015,00010,000*5) 日本、米国、オーストラリア、インドの首脳や外相らが安全保障や経済を協議する枠組み。日本米国中国5,000名目GDPの推移 88 ファイナンス 2022 Jun.かったと思います。中国研究会においても、前述したように、中国を国際システムの中に入れることによって、ルールを守ってもらう、透明性を増してもらうというところを一貫して強調して議論していたように思います。―最後に、今後、日本として、中国のどのような点に着目して、どのように向き合っていけばよいのかについて、お考えをお聞かせください。私の印象では、米国はクリントン政権のときもそうでしたが、政治と経済を分離させていく可能性が少しずつ高くなってきたように思います。政治・安全保障の面では厳格さを求め、中国に対してきちんとした正面からの対応を求める一方で、経済のうち、特に国防や安全保障に関わらない部分については、withコロナではないですが、「withチャイナ」になっていく部分があるのではないかと考えています。日本も安全保障の部分は譲れるものではなく、特に東シナ海の問題についてはこれから大きくなる可能性があると考えており、当然に台湾問題とも絡んでくる上、地域での米国の役割が相対的に低下していくおそれもあります。日米関係を基軸としつつ、QUAD*5などの形で友人を増やしていく、そういう意味でも防衛力と同時に外交も大切だと思います。このように安全保障など決定的に日本の国益に反するような部分については、当然それを守る対応をすることになりますが、それ以外の部分では、民間企業が成長することはやはり日本の国益なので、その部分において「withチャイナ」という議論をする余地は十分にあり得ることと思っています。「withチャイナ」の部分については、中国でビジネスをやるといった話に加え、中国人の優秀な人材とどのように関わるかということです。中国国内で活躍の場を十分に持てず、或いは、海外に出ている優秀な中国人が多い中で、どう「withチャイナ」を捉えていくのか。他の先進国よりも中国(企業)の方が高い技術を持っている部分もあり、また、それを担える人材も育ってきているのではないか、といった議論が出てきている中で、どうにかしてそれを日本の活力として生かせられないものか、という考え方もあるのかと思います。重要なのは、バランスのとれたリアリズムですが、今後の日中関係のあり方として、政治と安全保障を重視した上で、経済を含めた日本の大きな国益議論の中で、「withチャイナ」の部分をどのように確保するかという点が重要かと思います。なので、昔のように、中国を国際システムの中にどう入れるかといった議論とは、かなり変わっていくのだと思います。ただし、これまで中国と付き合ってきた限りで私が思うのは、我々が考えている以上に、中国は日本の国家と社会の安定性をよく見ていて、日本の存在と国際的役割を決して侮ってはいないように思います。

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