ファイナンス 2022年6月号 No.679
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2021202020192018201720162015201420132012201120102009200820072006200520042003200220012000199919981997199619951994199319921991 PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 8ファイナンス 2022 Jun. 87(出所)IMFWorld Economic Outlook April, 2022(参考 中国の実質GDP成長率推移)(%)16141210864201990考えていたと思うのですが、周辺諸国との関係がうまく進展せず、むしろ行き詰っているようにも見えます。中国は一方的に利益を取るだけで相手に与えようとせず、労働力まで自分の国から持っていくようなところが問題だったのかと思います。―國分座長は現代中国政治・外交や東アジアの国際関係をご専門とされていますが、研究会が始まって以降の日本・米国・中国関係を含めた国際関係、更には、2012年に習近平体制が始まって以降の10年間に、中国の外交の面でどのような変化があったとお感じになられていますか。1992年時点では、米国は中国との関係について、中国が市場経済で成長する中で、米国型の社会になるというようなイメージを描き出していたのだと思います。中国は多分、市場経済を入れていく過程で計画経済が消滅していき、その結果として、徐々に資本主義体制へと体制を変えざるを得なくなる、つまり、私有財産を認める体制に変わっていき、その部分が変わっていけば、やがて民主主義体制に移っていくはず、と米国は考えていたのだと思います。「エンゲージメント」、つまり「関与」することで、中国を民主主義体制に引き込んでいくというのが、90年代のクリントン政権以降、アメリカによって一貫してとられた方針だと思います。米国が鄧小平路線を見て、中国はいずれ資本主義から民主主義体制に変わると考えた一方で、日本においては、この中国研究会での議論もそうだったのですが、本当に中国は変わるのか、中国の体制的な変化にはやはり時間がかかるのではないか、というような意見が多かったように思います。ただし、日本独自に、一国では中国を変えられないので、中国をできるだけ国際システムの中に入れること、またそうした努力をすることが重要だという点で合意があったように思います。ということで、2001年に中国がWTOに加盟する際にも、日本は率先してそういった主張をしてきました。中国がWTOに加盟した後、中国は本質的に変わるのか、あるいはルール自体を中国自身のルールの中に、都合のいい形に変えようとするのではないかということが、議論の対象になっていた時期がありました。その時でもまだ、徐々にそれは変わっていくだろうという受け止めもありました。我々には、外圧によって、中国自体の仕組みが大きく変わって、本質的に市場経済になっていくという想定がありました。しかし、実際には想定通りにはいかず、変わらない部分も沢山ありました。2010年に中国が日本のGDP規模を超えた頃から、中国の自己主張がますます強まっていく方向に変化したように思います。米国としても期待を裏切られた感が非常に強いのではないでしょうか。特に、2018年に中国が憲法を改正し、習近平が国家主席の任期を撤廃した頃から、米国としてこうした思いが強くなっている印象です。これに対して、日中関係は歴史認識や尖閣諸島などの問題で元々悪い時期が長く、日本では、そもそも中国が本当に変わるのかについては懐疑的で、それほど大きく民主体制に変わるという理解では必ずしもな

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