ファイナンス 2022年6月号 No.679
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円 020212029102810261027102510241022102310211020102800290027002600240025002300220020002100221/319/317/313/309/307/305/3コラム 経済トレンド 96ファイナンス 2022 Jun. 53(%)50403020100(%)25201510502000010203040506070809101112131415161718192021(年)(注)海外現地生産比率=海外現地生産による生産高/(国内生産による生産高+海外現地生産による生産高)。海外現地生産比率を0.0%と回答した企業(海外現地生産を行わない企業)を含めた単純平均(注)全規模電気機器大規模企業化学小規模企業(注)2017年、規模別・業種別(出典)Bloomberg、日本銀行「外国為替市況」「全国企業短期経済観測調査」「デリバティブ取引に関する定例市場報告」、日本経済新聞、各社報道等、清水・伊藤・鯉渕・佐藤(2021)「日本企業の為替リスク管理」、伊藤・鯉渕・佐藤・清水(2018)「日本企業の為替リスク管理とインボイス通貨選択:『2017年度日本企業の貿易通貨建値の選択に関するアンケート調査』結果」、財務省「貿易統計」、内閣府「企業行動に関するアンケート調査」「日本経済2020-2021」、大和証券「2021年度~2023年度の企業業績見通し[2022年3月]」・本質的なリスク抑制手法として、企業活動の中で外貨の収入と支出を一致させる手法(オペレーショナル・ヘッジ)や、貿易建値通貨・取引価格の変更等が挙げられる。外貨建ての収支が一致すれば円建てにする際のリスクは相殺され、また建値通貨を円にしたり、為替変動に対して商品の価格改定を行うことができれば為替リスクを取引相手に転嫁することができる。・ただしこれらの手法は、利用可能かどうかが規模や業種によって異なる。例えば、国内本社と海外生産拠点の間の企業内貿易でそれぞれ外貨による輸出入を相殺するマリーや、国内外で外貨の債権と債務を相殺するネッティングといった手法は、4割ほどの企業で活用されているものの横ばいで推移している(図表11)。・また為替の変動局面において、価格や貿易建値通貨をどちらも変更しない企業は7割を占めており(図表12)、大規模企業では取引相手が自社グループであるため前提として外貨建て取引の為替リスクが生じていないことや、小規模企業では輸出先市場が競争的であることが理由として挙げられる(図表13)。・輸出の貿易建値もドルが5割と、ほぼ一定の割合のまま推移しており(図表14)、貿易建値にドルを選択し続ける理由としては規模問わず基軸通貨としてのドルの有用性が高いことが挙げらていれる(図表15)。(図表11)マリー・ネッティングの 利用割合・一方で、企業は海外生産比率を上昇させる中で、為替リスクへの耐性を強めていると考えられる(図表16)。・内閣府の試算によると、2002~2007年度と2013~2019年度を比較した時、為替レートの変化が企業収益に与える影響は製造業において低下しており、海外直接投資の増進とそれに伴う海外での現地生産体制構築の進展や、為替予約等のリスクヘッジ手法の発達などが寄与したと指摘している(図表17)。・また民間シンクタンクの推計によると、対ドル・ユーロともに1円円安になった場合の主要上場企業への影響度は、2009年をピークに低下傾向にある(図表18)。こうしたことから、日本企業の為替ヘッジ能力は、企業規模や業種によってその度合いは異なるものの、中長期的に向上してきたと考えられる。(図表16)海外生産比率(製造業)の 推移マリーおよびネッティングを行っている39.538.12009201361.2%38.8%(注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。36.6201757.6%19.2%全産業製造業素材業加工業非製造業(注)内閣府試算。想定為替レートが前回調査より1円変化したときの経常利益修正率を推計。対象は全規模。推計期間は2002年6月調査~2008年3月調査および2013年6月調査~2020年3月調査。点線は有意でないことを表す。その他は有意水準5%以上で有意。価格変更や貿易建値通貨の変更無し65.5%71.9%18.7%13.3%輸出価格の引き上げ/引き下げ貿易建値通貨の変更1.4%0.0%(注)2017年、複数回答可、全規模輸出相手が自社のグループ企業(現地法人など)であるため輸出先市場の競争の程度が高いため自社の生産・販売構造(体制)上、為替変動の影響をあまり受けないため為替ヘッジを行うことで為替変動の影響を回避できるため(注)2017年、複数回答可、規模別(%)432102002~2007年度2013~2019年度円高円安大規模企業小規模企業29.4%32.4%23.5%44.8%6.9%6.9%13.8%(%)706050403020100米ドルが世界の基軸通貨であるため、インボイス通貨として米ドルを選択する市場の競合度が高く、競合相手が米ドル建てで取引しているため、米ドル建て取引を選択せざるをえない自社の輸出品が米ドル建てで取引される慣行がある米ドルの取引コストの低さなど為替・金融取引の便宜性から米ドルを選択する20.0%(注)2017、複数回答可、規模別(%)1.10.90.70.50.303/3米ドル22/3 0.42%0.350.250.1522/3 0.08%11/315/30.05(年/月)(注)各種資料より大和証券による試算。個別企業の為替感応度に基づき、各期の試算時点に定めた平均為替がドル・ユーロともに1 円円安になった場合の、主要上場企業の経常利益への影響度。各時点で対象企業の構成は異なる。直近の値は2022年3月時点の2022年度の影響度。54.5%22.7%24.3%34.1%16.2%22.7%18.9%(%)0.45ユーロ米ドル(左軸)ユーロ(右軸)(図表12)為替変動が予想されるときの対応(図表13)価格変更や貿易建値通貨変更を行(図表17)為替レートの変化が わない理由(円安時)企業収益に与える影響(図表14)日本の対世界輸出における貿易取(図表15)貿易建値をドル建てにする理由大規模企業小規模企業54.1%(図表18)為替1円変化による 引通貨比率経常利益感応度企業の為替ヘッジ(2)近年の為替感応度

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