ファイナンス 2022年6月号 No.679
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321 021/0121/0221/0321/0421/0521/0621/0721/0821/0921/1021/1121/1222/0122/0222/03*19) WIRPでは米国、ユーロ、カナダ、英国、豪州、インド、日本、ニュージーランド、スウェーデンの利上げ確率を算出していますが、OISはすべての国について算出している一方、金利先物については米国と豪州のみ算出しています。豪州については金利先物のみで計算していますが、これは豪州準備銀行(Reserve Bank of Australia)が行う政策決定会合の数が多いことからBloombergがOISに立脚した利上げ確率を算出が安定しないこと等が理由とされています。*20) LIBORには銀行の信用リスクやタームプレミアム等が含まれていますが、詳細は筆者が記載した「金利指標改革入門」を参照してください。*21) メラメド(2010)は「IMMのユーロドル先物商品はCMEそのものだった。2003年を締めてみると、ユーロドル先物とオプションはCMEの総取引高の50%、総建玉の84%、純利益の75%を占めた」(p.204)とあります。*22) 足元については2023年6月末にドルLIBORの公表が停止され、ユーロドル金利先物も取引が停止される点に注意が必要です。*23) CME Group「ユーロドル金利先物:グローバル資金流動のバロメーター」より抜粋。*24) 詳細は下記を参照してください(本文での情報は執筆時時点の内容です。CMEの金利先物は商品性が変わりえるので、正確な情報を得るためには必ず英語のCMEのサイトをみるようにしてください)。https://www.cmegroup.com/markets/interest-rates/stirs/eurodollar.contractSpecs.htmlファイナンス 2022 Jun. 49図表9 ユーロドル金利先物の推移3.52022年末2023年末2.51.50.5(注)ここでは例えば2022年末については2022年12月限のユーロドル金利先物のデータを示しています。(出所)Bloomberg2024年末2025年末(出所)CME資料より筆者作成商品名取引開始取引単位上場限月3月限、6月限、9月限、12月限を10年先まで(計40限月)。さらに四半期限月以外のシリアル限月を直近4限月。価格の 表示方法価格の 最小変動幅最終取引日最終決済 方法ユーロドル金利(3ヵ月)先物1981年12月2,500ドル×IMM指数契約IMM指数=100-R Rは、限月第3水曜日の3ヵ月LIBOR金利0.005(USD12.50に相当)、最期近限月は 0.0025(USD6.25に相当)限月の第3水曜日の2ロンドン営業日前差金決済フェデラル・ファンド(FF)金利先物および利上げ(利下げ)確率入門図表10 ユーロドル金利先物の商品性*24であるCMEグループ名誉会長のレオ・メラメド氏の表現を借りれば、ユーロドル金利先物は最も成功した金利先物であり、それを取り扱うCMEは「ユーロドル金利先物そのもの」*21です。ユーロドル金利先物の凄さはその流動性です*22。CMEは、「ユーロドル金利先物が、最大の建玉枚数と共に、日中平均の売買高で他のプロダクトを凌ぐ存在」としており、「(2016年)11月末時点における総建玉の想定規模は、12兆8400万ドルに達している」*23と指摘しています。*24図表9はユーロドル金利先物の推移をみたものですが、ここでは2022年末から2025年末が満期であるユーロ円金利先物の予約金利の推移を示しています。これは投資家が将来の各年末にどのような金利の予測をしているかについて時系列データでみていることになります(ユーロドル金利先物の原資産が3か月ドルLIBORであるため、3か月金利の予測になっている点に注意してください)。図表10はユーロドル金利先物の商品性をまとめています。ここではその商品性について深堀しませんが、基本的にユーロ円金利先物の原資産をドルLIBORにしたものです(もともとユーロ円金利先物がユーロドル金利先物を参照して作成されています)。ユーロ円金利先物に比べ、ユーロドル金利先物は満期が遠い先物についても活発に売買がなされている点が特徴ですが、原資産となるドルLIBORの公表が停止されるため、今後、SOFR先物を用いた分析にシフトしていくことが予想される点に注意が必要です。4.4 ユーロドル金利先物に立脚した予測算出していますが、それはテクニカルな要因*19とされています)。ここまでFF金利先物およびOISについて取り上げてきましたが、実際には金融機関の実務家は、米国の利上げ・利下げを考えるうえでユーロドル金利先物を参照することも少なくありません。その背景には、FF金利先物の流動性は向こう1年程度であり、1年以降になるとそこまで流動性が高いとは言えないことがあります。そのため、金融機関の実務家などの分析ではユーロドル金利先物でFRBの利上げについて分析することが少なくありません。実際、FF金利先物とユーロドル金利先物の間には十分な裁定が働いているので、原資産が1か月のFFレートとドルLIBOR*20という違いはありますが、利上げ確率などを計算しても一貫した結果が出る傾向にあります。実務家の視点に立てば、FF金利先物については、より厳密に向こう数回のFOMCについてリスクヘッジしたい(リスクテイクしたい)というニーズに基づき取引しているといえます。その一方、ユーロドル金利先物については長期にわたる金利の方向性について取引していると解釈できるため、中長期的な金利の方向性を投資家がどのように予測しているのかという観点でユーロドル金利先物が織り込む価格は有益とみることもできます。そもそもユーロドル金利先物は世界で最も流動性がある先物の一つとされています。現在、世界最大の取引所

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