ファイナンス 2022年6月号 No.679
51/106

4利上げ確率に関するその他の論点4.1 BloombergによるWIRPp×0.3825%+(1-p)×0.1325%=0.26643% *16) ちなみに、服部(2022c)では、FRBは現在、リバース・レポ・ファシリティや連銀貸出により、上下のレンジを設けてFFレートを誘導しているという議論をしました。もっとも、あくまでもFRBの目標は(その上下のレンジに収まる)FFレートの誘導です。ここでの利上げ確率についてはFF金利先物に立脚しており、そこから示唆される予約金利によって利上げ確率を計算しているため、あくまでFFレートがどの水準に上昇するかについての予測になっている点に注意してください。ファイナンス 2022 Jun. 47図表7 利上げ確率の計算のイメージ図金利FOMCのタイミングで利上げがなされたらこの水準で推移0.1325%で推移16日月初FF金利先物より1か月のFFレートの平均は0.195%利上げがなされたら0.3825%で推移r=0.26643%利上げがなされなければ0.1325%で推移14日月末時間この期間におけるFF金利先物から示唆される予約金利フェデラル・ファンド(FF)金利先物および利上げ(利下げ)確率入門FOMC(2015年9月17日)4.2 OISに立脚した予測し、0.3825%(=0.1325%+0.25%)へ上がるとします。また、9月限のFF金利先物は99.805で取引されており、ここからインプライされる9月における1か月間平均のFFレートは0.195%(=100-99.805)とします。この関係をみたものが図表7です。FOMCまでの16日間は0.1325%で推移します。また、FOMC後の14日間においてマーケットで予測されている金利をrとします。繰り返すようですが、FF金利先物は1か月の平均金利の予約をしているため、(9月における)30日間の平均金利は0.195%になります。マーケットでは最初の16日間は0.1325%と想定されており、それ以降の14日間はr%で推移すると予測されていますから、FOMC後の金利rを用いれば、16×0.1325%+14×r=0.195%30という関係が成立します。これを解くと、r=0.26643%と計算されます。したがって、先ほどのように利上げ確率をpとすると、という式が成り立ちます。したがって、p=53.6%という形で利上げ確率が計算できました*16。実際の利上げ確率や利下げ確率を見るにあたっては、読者が上述のような計算をする必要はなく、様々な機関が利上げ・利下げ予想を行うツールを提供しており、実務家やメディア等はそれを用いています。特に、金融機関の実務家はBloombergが提供するツール(World Interest Rate Probabilities, WIRP)を使うことが少なくありません。WIRPでも前述と同じ考え方で利上げ(利下げ)確率が計算されていますが、FRB以外の中央銀行の利上げ確率を計算できる点や、オーバーナイト・インデックス・スワップ(Overnight Index Swap, OIS)に立脚した分析、さらに各種ビジュアル上の機能が充実しています。図表8はFF金利先物から示唆される政策金利(インプライド金利)および利上げ・利下げ回数の推移を示していますが、これはWIRPで表示される図表です(時点は2022年4月時点です)。この図をみるとFRBが政策金利を継続して上昇させていくという予測が示されています(WIRPでは向こう1年までの予測を計算しています)。Bloombergの特徴は前述のとおり、OISに立脚した利上げ確率も計算している点です(ここではOISの詳細については割愛しますので、詳細を知りたい読者は、筆者が記載した「金利スワップ入門」および「リス

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る