ファイナンス 2022年6月号 No.679
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(指標2) POA7-24 税務当局が不服申立ての解決の税務行政への活用執行に活用されているスで実施 38 ファイナンス 2022 Jun.能であったが、それ以外に不服申立て手続きや権利救済に関する情報は一切提供されていなかった。果たしてこれで「納税者に権利救済手続きをきちんと周知している」と言えるのか?審査チーム内で協議したところ、「このレベルではTADATの国際標準に達していない」との結論に達し、結果的に悪い評価となってしまった。に要する時間指標は、「税務当局への不服申立て事案が何日以内に終結しているか」である。「評価A」: 不服申立て事案の90%について30日以内に終結「評価B」:同90%について60日以内に終結「評価C」:同90%について90日以内に終結「評価D」:それ以上に日数がかかってしまう場合本指標では例によって、事前質問状により被審査国当局から提出されたTADATフォーマット表の数値データに基づき評価を行うが、このTADATフォーマットそのものに不備があることに気が付いた。フォーマットによると、終結した割合を計算する式は、「○日以内の終結件数÷年度末の未処理件数」となっているが、なぜ分母が未処理件数なのか?どうしてこれで正しい値を計算できるのか?単純化した例を挙げると、一年間に100件の不服申立ての請求があり、90件が終結して10件が未処理になったとする。また、申立て後30日以内に終結した事案は50件とする。これをTADATフォーマット表の計算式に当てはめると、30日以内に終結した事案の割合は、50件(30日以内終結)÷10件(未処理件数)=500%と、とんでもない異常値になってしまう。実際、被審査国から提出された数値データも、評価のしようがない異常値ばかりであった。90%かどうかが評価の指標なのに、これでは困ってしまう。この計算式の分母は、当然、一年間に「終結した」総数の90件にするべきではないか。それでもって計算すると、30日以内に終結した割合は、50件(30日以内終結)÷90件(終結総数)=55.6%と、至ってまともな数値となる。そして、仮に60日以内に、追加で35件の事案が終結していたとすれば、60日以内に終結した件数は、30日以内終結分の50件を足した計85件となるので、85件(50件+35件)÷90件(終結総数)=94.4%と、極めて美しい結果となり、90%以上の事案が60日以内に終結していることが見事に判明するので、指標に当てはめて「評価B」と確定できる。この問題については、「審査官のみの打合せ」で、TADATフォーマット表の計算式そのものがおかしい、と指摘したところ、筆者の提唱する計算式で評価することが認められた。リーダーは「今後のためにTADAT事務局に報告する」と言ってくれたので、“審査マニュアル”の次回改訂時には是正されていると思われる。(指標3) POA7-25 不服申立てから得られた成果指標は、「不服申立て事案の結果について定期的に分析を行い、政策・法改正や税務行政手続きの改善に活用しているか」である。「評価A」: 全ての事案について定期的に分析を行い「評価B」:全てではなく一部の事案のみを活用「評価C」: 定期的な活用がされていなく、都度ベー「評価D」:評価Cに満たないパフォーマンス当局担当者へインタビューしたところ、「分析や活用は全くしていません!」と、きっぷの良い堂々とした返答。

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