ファイナンス 2022年6月号 No.679
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(POA7) *10) 国税庁Web-Tax-TV「国外財産を追いかけろ!〜国際徴収への取組」 *11) 国税職員のモットーで、1949年の国税庁発足時にハロルド・モス氏(元GHQ内国歳入課長)から贈られた言葉(https://www.nta.go.jp/publication/webtaxtv/202103_a/webtaxtv_wb.html)ファイナンス 2022 Jun. 37(指標1) POA7-23 独立した実効性のある段階的指標には、以下の三つの基準(Dimension)がある。第一の基準は、(1)税務当局への不服申立て→不服審判所への審査請求→裁判所への訴訟提起、と段階的な権利救済手続きが採用されているか、(2)手続きが法令・規則等で適切に定められているか、の二つの要件である。もしも、税務当局内の不服申立て手続きが多段階(例えば、税務署→国税局とそれぞれに申立てなくてはならない場合など)であれば、納税者にとって不利益な制度と考えられるので、「評価B」となる。また、不服審判所が税務当局から独立していなければ、「評価C」となる。そもそも不服申立て手続きが適切に定められていなければ、当然「評価D」となる。第二に、「税務当局内における不服申立て担当職員の、当初調査部門からの独立性」である。もしも当初調査した同じ部門が、不服申立てに伴う再調査まで担当している場合や、当初調査を担当した張本人の調査官が、「その節はどうも」と悪びれもせずに再調査にやって来て、不服申立てをした納税者が唖然としてしまうような状況があれば、独立性に大いに問題があるので評価は低くなる。第三に、「不服申立てによる権利救済の手続きについて、納税者へきちんと周知されているか」である。具体的には、(1)税務当局のウェブサイト等で権利救済手続きの情報が得られるか、(2)調査担当者は不服申立ての権利を納税者に説明しているか、(3)調査終結通知書や更正の理由書に不服申立て手続きについて記載されているか、が要件となっている。全ての要件を満たしていれば「評価A」となり、(2)を満たされなければ「評価B」、(3)を満たさなければ「評価C」、(1)を満たしていなければ「評価D」となる。被審査国当局のウェブサイトを閲覧したところ、権利救済の関連法規と不服申立て申請書の様式は入手可な権利救済手続きの存在途上国の税務行政を診断する3  「不服申立ての効率的な解決」の審査んどの先進国が50%を超えている。筆者も審査官の端くれなので、税務当局以外の資料を「反面調査」することにした。被審査国の「会計検査院」が税務当局へ実地検査を行っていたので、その検査結果報告書を精査してみると、「こ、これは!?」と驚愕の事実を発見する。会計検査院は税務当局に対して、「安易に滞納処分の執行停止をする傾向があり、不当である」と極めて厳しい指摘をしていたのである。これはいけない―。税務当局として決してあってはならず、言語道断である。審査官としての怒りは頂点に達した。翻って、我が国税庁の滞納整理に従事する同胞たちは、国家の歳入を確保する最後の砦として、昼夜を問わず獅子奮迅の努力を尽くしている。最近では、言わずと知れた「国際的徴収共助」の枠組みを駆使して、滞納者が海外に隠匿した財産まで執念深く追いかけている。*10税務当局が滞納者を追うことを簡単にあきらめて、安易に滞納処分を停止して滞納者の納税義務を消滅させてしまえば、当然、一年以上の長期滞納率は少なくなるだろう。しかしその弊害として、滞納した者が結局得をすることになり、真面目に納税している人は報われなくなる。そんなことは絶対に許されない。そればかりか、滞納者に便宜を図るような汚職にもつながりかねず、ひいては国家財政まで破綻してしまうのではないか。安易な執行停止の結果として長期滞納率が低くなり、良い評価が与えられてしまうのであれば、本末転倒も甚だしいので、審査報告書の評価欄にはRemark(注意書き)を添えて、審査官の目は節穴ではないことを知らしめることにした。税務当局は、「正直者には尊敬の的、悪徳者には畏怖の的」*11でなくてはならない。

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