ファイナンス 2022年6月号 No.679
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(指標2) P5-16 源泉徴収など効率的な徴税システ 36 ファイナンス 2022 Jun.1件(Xの電子的納付)  ÷2件(Xの1件+Yの現金納付1件) となる。つまり、個々の納税者の納付額はそれぞれ異なるので、納税額と件数で全く同じ利用率になることなど現実的にあり得ないのだ。おおかた途中で計算が面倒臭くなって、数値をそのままコピペして提出したのだろう。気付かないとでも思ったのか…元国税調査官をなめてはいけない。そんなこんなでPOA4(期限内申告)の審査のときと同じように、当初提出された数値データを検証して、その修正申告を粘り強く説得することを繰り返したため、想定外に事務量が増えてしまった。元データが不正確であれば正しい評価なんぞ下しようがない。改めて、POA4とPOA5の審査を希望したのは、新人審査官の若気の至りであり、痛恨のミスであった。「今度こそ神に誓って絶対に間違いありません!」という最終の数値データをようやく受領した。なかなか良い評価となりそうな数字である。ところが「審査官のみの評価ミーティング」にて反対意見が出てしまった。全体の利用率がよくても個々の税目に着目してみると、主要税目である個人所得税の電子的納付手段の利用率が非常に低い。したがって良い評価を与えるべきではない、と言うのである。「そんな判断基準は“審査マニュアル”の一体どこに書いてるの?」と言いたかったが、新人審査官なので素直に従った。まあ確かに、当局提出のいい加減なデータに振り回された無駄な事務量を考慮すると、あまり良い評価にできないのも仕方がない。ムの活用指標は、「被審査国において源泉徴収や中間納付等の効率的な徴税システムが整備されているか」である。ここはリーダーに言わせると「ボーナス・ステージ」で、然るべく制度化されていれば評価に疑問を挟む余地はなく、被審査国も含めてほとんどの国が「評=50%(電子的納付利用率)価A」になるとのこと。そうはいっても、源泉徴収制度は、多くの国で「戦費調達」のために導入されたのは有名な話である。昨今の某大国がもたらした国際事情を鑑みると、効率的な徴税システムが、必ずしも良い目的だけに使われるとは限らないのではないか、という疑念を禁じ得ない。(指標3)P5-17 期限内納付率指標は、「付加価値税の期限内納付率」である。「評価A」は90%以上、「評価B」は75%以上、「評価C」は50%以上、それ以下は「評価D」となる。大規模納税者については更に厳しい追加指標が設定されており、期限内納付率が90%以下の場合は、全て「評価D」となる。提出されたデータを検討してみると、納税者全体の期限内納付率はまずまずであったが、大規模納税者の数値が低かったため最終的な評価は下がってしまった。ところで、なぜ指標が「付加価値税」なのか?“審査マニュアル”によると、「所得税には前払納付制度があり計算が面倒だから」と記載されている。でも我が国の消費税(付加価値税)にも同じ前払制度がありますけど…。(指標4)P5-18 滞納残高の推移及び長期滞納の割合指標には、以下の三つの基準(Dimension)がある。第一の基準は、「税収に対する年度末滞納残高の割合」つまり基本情報の「滞納率」である。第二に、「徴収可能税額の年度末残高の割合」である。これは一体何を意味しているのかよく分からなかったので、徴収課出身の同僚に知恵を借りたところ、「回収可能な滞納税額が適切に徴収されているのかを評価するもので、比率は少ない方がよい」とのことであり、被審査国はなかなか優秀な数値であった。第三に、「一年以上の長期滞納の割合」である。滞納税額は古くなるほど回収が困難になるので、長期滞納割合が少ないほど良い評価となる。TADAT基準では25%以下で「評価A」となるが、被審査国はそれよりもはるかに低い、断トツに良い数値である。しかし、いくら何でも数値が良すぎる。ちなみにOECDの税務行政比較レポートを参照すると、ほと

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