ファイナンス 2022年6月号 No.679
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ファイナンス 2022 Jun. 35における利用率指標は、「主要税目の電子的納付手段における(1)納税者全体と(2)大規模納税者の、それぞれの利用率」である。「評価A」: (1)納税者全体で、75%以上の納税額 について電子的納付手段を利用、かつ (2)大規模納税者は、全て(100%)の納税額について電子的納付手段を利用「評価B」: (1)納税者全体で、50%以上の納税額 で利用、かつ (2)大規模納税者は90%以上の納税額で利用「評価C」: (1)納税者全体で、25%以上の納税額 で利用、かつ (2)大規模納税者は80%以上の納税額で利用「評価D」: 評価Cよりも%が低いとき、もしくは評価のための判断材料が不足しているとき事前質問状で送付する数値データの表では、被審査国の電子的納付手段の利用率について、主要税目と大規模納税者に関して、納税額と件数のそれぞれの率を記入して提出するよう求めている。そして評価の指標となる利用率は、件数ではなく納税額をベースに判断される。提出された数値データを検討してみると、大規模納税者の電子的納付手段利用率が異様に低い。担当職員を呼んで理由を聞くと、「いえいえ、大規模納税者は電子的納付が義務化されていますから、利用率がそんなに低いはずはありません!」と、例によって平気な顔で数値データと矛盾した回答をしてくる。そうであれば提出したデータが間違っていることになるので、データを訂正して再提出するよう依頼した。ここでリーダーから、「電子的納付手段の定義についてきちんと確認するように」とのアドバイスが入る。当局に説明を求めると、以下の4つの手段を電子的納付手段としてカウントしているとのこと。途上国の税務行政を診断する(1)インターネットバンキング(2)ATM(3)モバイルバンキング(4)銀行窓口での納付「ん?」と違和感を覚えて、(4)がなぜ電子的納付に該当するのか質問したところ、「銀行と国庫が電子的につながっているからです!」との回答。これは一体どうなのか?改めて“審査マニュアル”を参照すると、電子的納付の定義の一つとして「納付に銀行スタッフが関与していないこと(without the direct intervention of the bank staff)」と記載されている。つまり、窓口納付では銀行スタッフが対応することになるので、TADAT基準では電子的納付には該当しない。したがってデータ訂正版の作成に当たっては、(4)の「銀行窓口での納付」をカウントしないように担当者に念を押した。後日提出された訂正版をチェックしたところ、電子的納付手段の利用率について見合った数値を出してきてくれたので、さっそく評価を下そうとしたところ、あろうことか、とんでもない事実に気が付いた。税目ごとの電子的納付手段の利用率の数値データが、納税額ベースと件数ベースで、なんと小数点以下まで全く同じなのである。これはどう考えてもおかしい。数値の信憑性は、もはや地に堕ちた。疑問点を分かりやすくするために、単純化した例を挙げると、被審査国には納税者がXとYの二名しか存在しないと仮定して、Xは税額90円を電子的に納付し、Yは税額10円を現金で納付していたとする。この場合、納税額ベースの利用率は90円(Xの電子的納付)  ÷100円(Xの90円+Yの現金納付10円) となるのに対し、件数ベースでは=90%(電子的納付利用率)2 「期限内納税」の審査(POA5)(指標1) P5-15 電子的納付手段の活用と主要税目

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