ファイナンス 2022年6月号 No.679
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*8) TADAT Performance Assessment Reports (https://www.tadat.org/performanceAssessmentReports)ファイナンス 2022 Jun. 33途上国の税務行政を診断する10 審査報告書案の草稿11 終了ミーティング12 被審査国からのコメント13 審査報告書の確定1 「期限内申告」の審査(POA 4)(指標1)POA4-12 主要税目における期限内申告率税目毎に指標が定められており、法人税についてはもとより“審査マニュアル”自体に不明瞭な部分が多いので、その解釈をめぐって激しい議論になることもあり、紛糾した場合は、最終的にリーダーの判断に従う。各POAの審査終了後、審査チームは終了ミーティング(最終日)の24時間前までに、被審査国に対して「審査報告書案」を提出しなくてはならない。リード審査官は、自身が担当したPOAの各指標に関してAからDまでの評定を下し、その評価理由を報告書に英文で記載する。また、報告書のIntroduction(概況)パートについても各審査官が分担して作成する。筆者は「租税条約に基づく情報交換」の職歴が長かったため、「International Information Exchange」のパートを主に担当した。草稿期間は数日しかないので、土日や昼夜を問わず大慌てで作業することになる。リーダーは、それぞれの審査官が作成した各項目の報告について、内容を全てチェックして適宜訂正しなくてはならないので、報告書作業期間中は「ほとんど寝る時間がない」と言って多忙を極めていた。約三週間にわたる審査スケジュールの最終日に実施される。リーダーは、被審査国のこれまでのTADAT審査への協力について感謝するとともに、最終的な診断結果と評価内容について説明する。被審査国の長官からは、審査チームの労をねぎらう感謝の言葉が述べられて終了するのが一般的であるが、某国の審査では長官が悪い評価に納得できず、最後のミーティングなのに重苦しい雰囲気となってしまった。将来の税務行政の改善のために問題点を診断するのがTADATの目的であるのだが…。被審査国が診断結果に不服がある場合は、審査報告書案を受領してから21日以内にコメントをTADAT事務局へ提出する。コメントは担当パートの審査官へ回付されて内容が吟味され、評価を見直すかどうかについて審査チーム内で協議される。報告書案のコメントへの対応が終わり、診断結果について被審査国と審査チームの双方が納得した場合には、TADAT事務局の最終的なチェックを経て、正式に審査報告書が確定する。被審査国の了解を得られた場合は、TADATウェブサイトにて最終審査報告書が公表される。*8以下のとおり。「評 価A」: (1)90%以上の法人が期限内に申告、かつ(2)100%の大規模法人が期限内に申告「評 価B」: (1)75%以上の法人が期限内に申告、かつ(2)95%以上の大規模法人が期限内に申告「評 価C」: (1)50%以上の法人が期限内に申告、かつ(2)75%以上の大規模法人が期限内に申告「評 価D」: 評価Cよりも%が低いとき、もしくは評価のための判断材料が不足しているときPOA4は、被審査国の当局から回答された事前質問状の数値データに従って単純に評価すればよいので、比較的審査が楽なパートではないか、と勝手に想像していた。ところがどっこいフタを開けてみると、提出データの正確性についての疑問が大量に噴出し、その実際のTADAT審査とは?筆者がリード審査官として担当したのは、9つの審査項目のうち、POA4「期限内申告」、POA5「期限内納税」、POA7「不服申立ての効率的な解決」の三つであった。以下、それらの審査の実際の状況について順に説明したい。

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