ファイナンス 2022年6月号 No.679
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(https://www.imf.org/en/Capacity-Development/Training/ICDTC/Courses/TADAT) *4) IMF Training Catalog, TADAT Course Details *5) List of the Trained TADAT Assessors(https://www.tadat.org/trainedAssessors)*6) TADAT Online Training(https://www.tadat.org/onlineTraining)ファイナンス 2022 Jun. 29(図2)TADAT審査官の合格証。これを持たざる者はTADAT診断業務を行うことはできない。途上国の税務行政を診断する「我が国のTADAT審査官をもっと増やして、IMFの活動にさらに貢献しようではないか!」と考えた幹部がいらっしゃったようで、日本の税務大学校において、IMFから講師3名を招聘した三日間の「TADAT資格取得研修」が開催されることになった。講義は全て英語で行われるので、受講生はある程度のリスニング力が必要である。研修修了後は「最終試験」が課される。その設問は、とある架空の国の税務行政について条件設定がなされ、“審査マニュアル”に記載の9つの評価項目に係る32の指標を参照しながら、TADATが定める国際標準に従って診断を行い、AからDまでの評点を正しく付与できるかを問うものである。正味1時間のテストで計20問が出題され、15問(75%)以上正解しないと不合格となる。*4例えば、(設 問)X国の税務当局では、納税者からの不服申立てに対して、調査部門の審理担当者が対応しているが、TADAT基準での評価をA~Dから選択せよ。(注:原文は英語)との問いがあった場合、正解は「評価B」である。“審査マニュアル”では、不服申立てへの対応について独立性に着目しており、調査部門以外が対応していれば「評価A」、調査部門の審理担当者が対応していれば「評価B」、調査部門で調査担当者以外の調査官が対応していれば「評価C」、それ以下(つまり、調査担当者が自らの事案の不服申立てに対応するような独立性のかけらもないケース)は「評価D」となる。問題英文の読解力もさることながら、“審査マニュアル”の中から設問に該当する箇所を素早く参照して回答する必要があり、かなり骨が折れる試験であったが、なんとか合格して晴れて審査官となることができた。後日、名前入りの合格証(図2参照)が送付されてきて、TADATウェブサイトの審査官リスト*5にて、氏名、所属、国籍が公表される。「TADAT資格取得研修」と「最終試験」はオンラインでも実施されており*6、コロナ禍ではむしろこちらの方が主流といえよう。試験の際は不正防止のため、試験監督官がPCのカメラを通じた「現況調査」によって受験者の室内の状況を確認する。試験中は“審査マニュアル”しか閲覧できないので、カメラの前で中身をペラペラめくって見せて、他の参考資料が入っていないことを証明する。身分確認では、運転免許証などは日本語表記なので外国人の試験監督官には内容が理解できないため、パスポート等の写真付き英語表記のIDを画面越しに提示する必要がある。スマホは電源を切って離れたところに置くよう指示され、PCは専用アプリのインストールによって遠隔モードとなるため、どこかの国の大学入試のように試験中にググって検索することはできない。試験監督官は受験者に立ち上がるよう命じ、PCのカメラで部屋全体を見せるように指示して、助言者等が同室していないことを確認する。ということは、在宅参加のオンライン会議でありがちな、上半身はネクタイとビジネススーツでビシッと決めているのに下半身は短パンしか履いていないような出で立ちは、即刻バレてしまうのは言うまでもない。マレーシアにてTADAT研修講師せっかく審査官の資格を取得したものの、実際の審

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