ファイナンス 2022年6月号 No.679
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*1) 拙著「イスラムの国に赴任して」(ファイナンス2018年4月号)参照*2) TADAT Field Guide(https://www.tadat.org/■eldGuide)ファイナンス 2022 Jun. 27評価A国際標準以上のパフォーマンス評価B健全なパフォーマンス評価C国際標準以下のパフォーマンス評価D不十分なパフォーマンス税務大学校 研究部 国際支援グループ 教授 小杉 直史TADATとは?「TADAT」と聞いて、にわかにその正体がわかる人は、ただ者ではない。はじめに今を去ること2018年の夏、インドネシアJICAへの出向から三年半ぶりに帰国して*1、久しぶりの本庁(霞が関)勤務に忙殺されていた頃、税務大学校の某国際支援室長から突然、「TADATの資格取得研修を受けてみない?」と声をかけられた。そして、軽い気持ちで「…はい」と返事をしてしまった。思えばこれが、TADATという未知の領域へ足を踏み入れた瞬間で、その後は、どういう訳か深く関わることになってしまうのである―。約5万6千人の国税職員の中には、このような一風変わった経験をして(させられて?)いる者も存在するという事実を、本稿でご紹介する機会をいただけたことに、深く感謝したい。なお、本文中の意見・感想等については、すべて筆者の私見である。それは、国際通貨基金(IMF)が開発したTax Administration Diagnostic Assessment Tool(つまり税務行政診断ツール)の略称であり、IMF主導の審査チームを開発途上国に派遣して、その国の税務行政が適正に執行されているかどうかを診断し、評価を行う支援活動のことである。具体的には、税務行政の健全性に関する国際標準(International Good Practice)に基づいた客観的な評価指標を用いて、将来の税務行政改革や技術支援のための基礎となる情報を提供する枠組みであり、以下の効果が期待されている。- 被審査国の税務行政における、相対的な長所及び短所の診断- 税務当局、国際機関、ドナー等の間における交流、議論、及び情報共有の促進- 税務行政改革に関する目標、優先課題、実施プロセス等の計画策定- 診断を繰り返すことによる、税務行政改革の進捗度合い及び成果の把握評価は、TADAT事務局が公表している200ページにもわたる「TADAT Field Guide*2(以下、“審査マニュアル”)」に記載された、9つの審査項目(POA:Performance Outcome Area)及び32の指標(Indicator)に基づいて決定される(図1参照)。各指標は“審査マニュアル”の基準に即してTADAT審査官によって評価され、以下の4段階で評点が付与される。なお、評価は単なるベンチマーキング情報であり、IMFから被審査国へのファンディング等には影響しない。途上国の税務行政を診断する~TADAT審査官の業務を終えて~

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