ファイナンス 2022年6月号 No.679
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1G20財務大臣・中央銀行総裁会議 (2022年4月20日)G20については、2021年議長のイタリアからインドネシアに引き継がれて以来、2022年2月17、18日にジャカルタで開催された会議に続く2回目の会議となった。 24 ファイナンス 2022 Jun.2022年4月20日から4月22日にかけて、アメリカ・ワシントンDCにおいて、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)、G7財務大臣・中央銀行総裁会議(G7)、国際通貨金融委員会(IMFC)、世界銀行・IMF合同開発委員会(DC)等の国際会議が開催された(対面とオンラインのハイブリッド形式)。一連の会議では、本年2月24日以降のロシアのウクライナに対する侵略戦争をめぐって、ロシアに対して厳しい非難の声が上がる等、異例の対応が取られるとともに、侵略戦争の世界経済への影響や、ウクライナ支援等が議論の中心となった。以下本稿では、各会議における議論の概要を紹介したい。冒頭の世界経済セッションにおいては、ウクライナのマルチェンコ財務大臣の対面での参加を得て、ロシアのウクライナに対する侵略戦争による世界経済への影響等について議論が行われた。日本からは、ウクライナとの連帯を表明するとともに、ロシアの侵略戦争について、国際秩序の根幹を揺るがす行為で明白な国際法違反であることを指摘し、厳しく非難した。その上で、エネルギー・食料価格の高騰、サプライチェーンの混乱といった、ロシアの侵略戦争によって世界経済が直面する多くの困難に協調して取り組む必要性があり、(1)一刻も早く平和を取り戻すことが世界経済にとって最も重要であり、制裁措置によって戦争のコストを高めることも含め、国際社会が一致団結してロシアに圧力をかける必要があること、(2)ウクライナや周辺国に対して、国際金融機関と連携して迅速に支援を提供する必要があり、日本としてもウクライナに対する世銀との協調融資を増額(注)すること、(3)エネルギー・食料価格の高騰に対処し、脆弱国への支援を強化する必要があること、等を指摘した。(注)4月G20・G7においては1億米ドルから3億米ドルへの増額を表明した。その後、5月のG7ペータースベルク会合において、6億米ドルに倍増する旨表明している。この他、今回のG20では、国際保健、国際金融、サステナブル・ファイナンス等についても議論された。国際保健については、将来のパンデミックに対する予防・備え・対応の強化に向けた取り組みが議論された。多くの国が、既存の国際保健システムにおける資金ギャップに対処するため、国内資金や既存機関の取組を補完する新たな資金メカニズムを設立する必要性があることに同意した。具体的には、世界銀行に新たな基金を設立することが最も有効な案として、多くの支持を集めた。SDR(特別引出権)のチャネリング(注)について、多くの国が、気候変動・パンデミック等に対応するための強靱性・持続可能性トラスト(RST)の新設がIMFにおいて合意されたことを歓迎した。日本からは、2021年8月に行われたSDR新規配分額の20%のチャネリングをプレッジするとともに、RSTへの最初の貢献として、10億ドル相当のSDRとそれに見合う準備金を拠出することを表明した。また、低所得国の債務問題については、多くの国が低所得国の債務救済に関する「共通枠組」の早急な進展・予見可能性向上が必要であると強調した。(注)SDR(特別引出権)は、国際的な流動性を創出するため、IMFが創出し、加盟国に配分する合成通貨。配分されたSDRは、SDR金利を支払うことで米ドル等の自由利用可能通貨に交換可能。新規配分されたSDRは、IMFの全加盟国に対して、出資割合IMF・世界銀行春会合およびG7、G20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要(2022年4月20~22日、於:アメリカ・ワシントンD.C.)国際局国際機構課長 飯塚 正明/国際局国際機構課 明石 悠誠国際局開発機関課長 田部 真史/国際局開発機関課 三浦 駿人

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