ファイナンス 2022年6月号 No.679
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*8) 自己資金の有効活用の一つとして、IDAが市場において、長期(15年以上)固定金利債による資金調達を行うことで、IDAの財務管理ルール上必要な*9) 2021年12月の増資合意時点の数字。IDAは、増資合意後でも、当該増資の対象期間が終了するまでの間、新規ドナーによる貢献や既存ドナーによる*10) 第20次増資に係る出資分(約3,767億円)に加え、重債務貧困国に対する債務救済費用の日本負担分(約438億円)の総額約4,206億円の払込み*11) 従来、貢献シェアは、ドナー貢献額に対する割合が示されていたが、IDA20からはドナー貢献の目標額に対する割合が示されるようになった。資本バッファーを小さくし、それにより捻出された資金を活用することとしている。追加貢献を受け付けているため、IDA20の最終的なドナー貢献額は変動する可能性がある。を行うため、国会において「国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律」の一部改正が審議され、本年3月30日に全会一致で成立した。(西尾副総裁の写真) 22 ファイナンス 2022 Jun.のためには、COVID-19の影響が特に大きい低所得国の支援が不可欠であることを踏まえ、IDAの自己資金の更なる有効活用を行いドナー負担額の抑制も図りつつ*8、IDA19よりも110億ドル増で過去最大となる支援規模930億ドル、ドナー貢献額235億ドル*9で合意に至った。日本として、IDA20については、COVID-19の影響への対応やUHCの推進を含む保健システムの強化、質の高いインフラ投資の推進、デジタル化の加速、自然災害に対する強靭性の構築、債務の透明性・持続可能性の向上等の日本が重視する開発課題が重点政策に位置づけられており、高く評価している。また、新興債権国が途上国支援においてプレゼンスを増し、日本の資金だけで対抗することが困難になる中、世界を代表する開発機関であるIDAは多数のドナーからの資金により途上国支援において引き続き大きな影響力を有しており、そのようなIDAにおいて日本のプレゼンスを確保することは、日本が重視する開発アジェンダを実施していく観点から極めて重要である。4最後に繰り返しとなるが、今回のIDA20は、増資の前倒しの議論から、重点政策に関する議論、そして最終会合の主催に至るまで、日本が一貫して交渉を主導した。これまでも日本は、新興国が台頭する中でも、国際的な開発支援のアジェンダ設定では強い影響力を発揮してきたが、IDA20で発揮したリーダーシップはこの影響力を一層強固なものとした。日本が重視する開発課題がIDA20の重点政策として盛り込まれたことは、その証左でもある。こうしたことを踏まえ、日本は、厳しい財政状況にある中でも、約3,767億円の出資貢献を行うこととした*10。IDA20における日本の貢献シェアは13.8%*11、米国に次ぐ第2位となっている。そして、これらの分野は、途上国が持続的な成長実現に当たり、間違いなく対応しなければならない課題であるとともに、日本の知見やノウハウが活かされる分野でもある。そのため、今後3年間のIDA20期間コラム 第20次増資を担当した西尾昭彦世界銀行副総裁世界銀行グループの主要機関の一つであり、低所得国支援を担っているIDAの今後3年間の方針を策定し、ドナーから必要な資金を集めることは、世界銀行グループの最重要任務の一つと言える。開発金融総局の担当副総裁として、IDA19に引き続きこの重責を担い、過去最大の資金規模となるIDA20の増資交渉を成功裏に取りまとめたのが、西尾昭彦氏である。ドナー各国と協力して開発支援を行っていく姿勢が高く評価されており、IDA20に日本が重視する開発課題が反映されたのも西尾副総裁との連携によるところが大きい。西尾副総裁は、1988年にヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)により世界銀行に入行して以降、IDA担当局長、南アジア地域担当戦略業務局長、世界銀行研究所業務局長、公正成長・金融・制度(EFI)担当副総裁代行等を歴任。周りからは「アキ」のニックネームで親しまれている。世界銀行入行以前は、海外経済協力基金(現JICA:国際協力機構)に勤務。(参考:世界銀行HP)

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