ファイナンス 2022年6月号 No.679
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1はじめに世界は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や気候変動問題に加え、ロシアによるウクライナ侵略の発生により、複合的な危機に同時に直面している状況にある。そうした中でも、「持続可能な開発目標(SDG)」に掲げられている、2030年までに貧困をなくすとの目標の達成に向け、途上国の開発支援の分野において主導的な役割を担っているのが世界銀行グループである。国際復興開発銀行(IBRD)○中所得国及び信用力のある低所得国を対象○市場から調達した資金等で長期融資を供与国際開発協会(IDA)○低所得国支援に特化○加盟国からの出資金・市場調達資金をもとに、超長期・低利の融資・グラントを供与○3年ごとに増資○担当副総裁:西尾昭彦国際金融公社(IFC)○市場から調達した資金等で、途上国の民間案件に投融資○IFC長官:マクタール・ディオップ(セネガル)多数国間投資保証機関(MIGA)○途上国向けの民間投融資に、ポリティカル・リスク保険を供与○MIGA長官:俣野弘*1) IDA増資は、総務(日本は財務大臣)の副官(IDA Deputy)が交渉を行う慣例となっている。日本は、第1回交渉及び第2回交渉を三村淳大臣官房審*2) 本稿において意見の表明に当たる部分は、筆者個人の見解であり、財務省、日本政府の意見を代表するものではない。また、英語で記された原文の日議官(国際局担当)(当時)、第3回交渉及び第4回交渉を緒方健太郎大臣官房参事官が、IDA DeputyとしてIDA第20次増資の交渉を担当。本語訳は筆者によるものであり、公式の翻訳ではない。(資料 世界銀行グループの概要)国際局 開発機関課 課長補佐 足立 直也*2/国際局 開発機関課 第一係長 辻 直樹*2に、途上国に対して融資等を行う世界最大の開発金融機関であり、貧困の削減と繁栄の共有の促進という2大目標を掲げ、その達成に向けて、4つの中核機関がそれぞれの役割に沿った支援を実施している。*1*2本稿では、世界銀行グループのうち、低所得国支援を担っている国際開発協会(IDA(アイダ):International Development Association)の概要と、IDAの約60年の歴史上初めて1年前倒しで行われ、昨年12月に合意したIDA第20次増資(IDA20)の増資交渉における議論について紹介したい。 18 ファイナンス 2022 Jun.世界銀行グループは、加盟国からの出資金をもと日本は1952年に世銀(IBRD)に加盟。かつては最大の借入国の一つであった。世銀融資は、東海道新幹線や東名・名神高速道路、黒部第四水力発電所等の基幹インフラや、製鉄業等の近代化に活用。現在、日本は、世銀グループを構成する各機関において、米国に次ぐ第2位の出資国。1.世界銀行グループとは途上国における貧困の削減・繁栄の共有の促進を使命とする世界最大の援助機関。世銀グループを構成する中核4機関は右表の通り。このうち、最も歴史のあるIBRD(国際復興開発銀行)は、第二次大戦後の1945年に設立(加盟国数:189)。2.組織本部:ワシントンD.C.総裁:デイビッド・マルパス(米)(2019年4月-)(前職は、米財務省次官(国際担当))3.日本と世銀の関係世界銀行グループ概要国際開発協会(IDA)第20次増資について*1

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