ファイナンス 2022年6月号 No.679
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ファイナンス 2022 Jun. 17【新しい議題】前述の3本の柱はこれまでASEAN+3の域内金融協力の骨子となっており、引き続き重要な議題と考えられる。他方で、気候変動やデジタル化の進展など地域を取り巻く環境が変わる中、域内協力を深化させより一層効果的なものとするため、新しい議題を取り込んだ議論も重要となる。その観点から、日本は自然災害リスクに対する財務強靭性の向上と、金融デジタル化による影響といった議題を説明し、来年に向けてその議論を深めることを提案した。エ.自然災害リスクに対する財務強靭性の向上これまで日本は、自然災害リスクに対する財務強靭性の向上に係るワーキング・グループを主導してきた。本会議では、日本が共同議長となる2023年に自然災害リスクへの対応を定例議題化することを目指して、今後議論を進めていくことが承認された。また、定例議題化にあたっては、東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF)などの既存の枠組みを活用することとされている。なお、SEADRIFは、自然災害リスクへの対応に保険スキームを活用し、ASEAN諸国の財務強靭性を向上させることを目的としたASEAN+3の枠組みである。日本は立ち上げ段階から議論を主導し、2021年2月には最初の成果物としてラオスを対象とした自然災害保険が開始された。2022年1月には8か国目のメンバーとしてベトナムがSEADRIFに加入し、現在、公共財産(道路や橋等の主要インフラ)保護に係る議論がなされており、今回の会議ではその議論の進展が歓迎された。オ.金融デジタル化ASEAN+3地域ではデジタル通貨等の金融デジタル化が急速に進んでおり、各国の経済発展と域内連携をますます強める機会となる一方、金融の安定性の確保、資本規制の変容、危機の伝播速度の増大等、これまでとは異なる新たなリスクや脆弱性が出現する可能性がある。こうした観点から、日本は金融デジタル化に関する新たなイニシアティブを提起しており、本会議では、アジアにおける地域金融協力の促進(ASEAN+3,日中韓)2第22回日中韓財務大臣・中央銀行 総裁会議金融デジタル化が既存の地域金融取極(RFAs)に及ぼす影響の分析や、金融協力の今後の在り方に関する提言といった成果物を2023年に取りまとめることを見据え、各国の支持・協力の下にAMROの調査や加盟国による議論が進められていることが歓迎された。他にもインフラファイナンスやフィンテック、トランジション・ファイナンスなどが各国より今後の論点として取り上げられた。ASEAN+3の会議時に、主にASEAN+3の議題に沿って議論をする会議であり、2000年以降ほぼ毎年開催され、日中韓の3か国で率直な意見交換ができる重要な場となっている。今年は中国議長の下で開催され、日本からは鈴木大臣、黒田総裁が出席した。会議では、域内各国の経済・金融情勢及び地域金融協力について意見交換を行った。なお、鈴木大臣は発言の冒頭で、韓国のチュ・ギョンホ企画財政部長官(日本の財務大臣に相当)及びイ・チャンヨン韓国銀行総裁の就任に対し祝意を述べた。

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