ファイナンス 2022年6月号 No.679
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1第25回ASEAN+3財務大臣・中央国際局地域協力課長 森 和也/地域協力調整室長 日向寺 裕芽子/地域協力課協力第二係長 穴沢 衛/地域協力課企画係長 澤田 駿 14 ファイナンス 2022 Jun.銀行総裁会議(2)地域金融協力について(1)世界と域内の経済・金融見通しや政策対応ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)、アジア開発銀行(ADB)、国際通貨基金(IMF)から世界・域内経済の見通しについて説明があった後、域内各国の経済・金融情勢について大臣・総裁間で意見2022年5月12日(木)、アジアにおける地域金融協力関連の会議として、第25回ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議及び第22回日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議がビデオ会議形式で開催された。本会議は1997年のアジア通貨危機を契機として、アジアの自助・金融セーフティーネットを構築する機運が高まる中、1999年にASEAN+3財務大臣会議が開催されたことを始まりとする(中央銀行総裁は2012年から参加)。日本は設立段階から議論に積極的にかかわっており、ASEAN+3域内の連携を強化する上で非常に重要な会議となっている。今年は、新型コロナウイルスのパンデミックやウクライナ情勢により地域経済が大きな影響を受ける中、各国の対応が議論されるとともに、地域金融協力の推進の重要性が改めて認識された。以下、本稿ではこれらの会議における議論の概要を紹介したい。中国とカンボジア共同議長の下開催され、日本からは鈴木財務大臣と黒田日銀総裁が出席した。会議では(1)世界と域内の経済・金融見通しや政策対応についての意見交換、及び(2)ASEAN+3金融協力について議論しており、以下その概要を紹介する。交換を行った。各当局が新型コロナウイルスのパンデミックの影響を緩和するため迅速に対処し、ワクチン接種の推進等の政策対応を行ったことで、2021年の域内成長率は約6%と力強い成長率となったことを確認した。また、本年は、より力強い経済回復を期待する一方、いくつかの先進国における予想よりも早い金融政策の正常化、サプライチェーンの混乱の継続、及び食料・エネルギー価格の高騰は、現下のロシア・ウクライナ紛争も相俟って、域内の貿易、投資、成長、及びインフレの見通しへ下方リスクをもたらし得ることを確認した。なお、日本からは、ロシアによるウクライナ侵略が、アジア経済が直面する困難の主因となっていることも指摘した。ASEAN+3地域の金融協力は、従来から3本の柱に沿って議論を行ってきた。今回は、これらの柱の議論とともに、来年日本がインドネシアと本会議の共同議長を務めることも踏まえ、域内金融協力を更に深化させる新しい議題を日本から提案し、その両者を議論する会議となった。以下、この従来の3本の柱と新しい議題という形で今回の会議の議論を紹介したい。ア.【第1の柱】チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)1997年に発生したアジア通貨危機を教訓に、ASEAN+3では、急激な資本流出による危機が生じた国を支援し、危機の連鎖と拡大を防ぐ枠組みとして、2000年に二国間通貨スワップ取極から構成されるチェンマイ・イニシアティブ(CMI)が立ち上げられた。その後、2010年には、これらの通貨スワップ発アジアにおける地域金融協力の促進(ASEAN+3,日中韓)

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