ファイナンス 2022年6月号 No.679
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通常の日本国債IRは現地の投資家との対面面談が基本スタイルですが、私が着任した令和2年以降は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、外国出張ができなくなりました。そこで、オンライン会議ツールを活用し、PC画面の向こう側の投資家と面談することとしました。オンラインIRは出張事務が不要で、距離の壁を簡単に越えられます。このメリットを活かし、出張しにくい地球の裏側の国々(ペルーやブラジル等)の投資家との面談も実現しました。また、米国の投資家と面談後10分休憩を挟んでカナダの投資家と面談という感じで効率的にIRを実施できるようになりました。他方で、課題も見えてきました。例えば、時差により早朝7時や深夜10時に開始する面談もしばしばありました。お互いの現地時刻に合わせ“Good morning”、“Good evening”と挨拶を交わす場面は印象的なのですが、画面越しでは、相手の「空気」を読んだり財務省の「熱量」を伝えるようなことは、リアルのコミュニケーションに比べて難しく感じられました。世界中を飛び回れなかったとは言え、多くの投資家とお会いできたのは大変貴重な経験でした。そう思いつつ、オンライン会議のメリットと課題とを総括して出向元に戻る準備をしていたところ、5月にパリへ出張することが決まり、この度最初で最後となる海外出張を経験して参りました。現場ではウェブIRでは難しかった「空気感」や「熱量」を直に肌で感じることができ、非常に有意義な面談を行うことができました。財務省における最後のチャンスにこのような経験をすることができ、素晴らしい業務の締めくくりができたと思っています。ファイナンス 2022 Jun. 13左から栗田、大野、松山オンラインIRの様子日本国債IRの活動を通じて〈コラム〉日本国債IRのリアル筆者の一人(大野、以下私)は令和2年7月、官民交流で財務省に出向し、主に日本国債IRを担当しました。私が一番注力しましたのが、オンラインによる日本国債IRの開催です。この機会に、日本国債IRのリアルな内容をお伝えしたいと思います。

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