ファイナンス 2022年6月号 No.679
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12 ファイナンス 2022 Jun.海外投資家のプレゼンス(1)日本経済について(2)債務残高対GDP比、格付について(3)日本国債についてされています。同統計によれば、海外投資家の地域別の保有額(令和3年末)は、(1)欧州113.3兆円、(2)北米42.9兆円、(3)アジア39.3兆円となっています。国別の保有額を見ると、上位3か国は(1)アメリカ40.9兆円、(2)ベルギー35.3兆円、(3)ルクセンブルク34.9兆円となっています。なお、いわゆるタックスヘイブンなど複数の国に所在する口座を通じて日本国債を保有する海外投資家も存在するとも言われています。日本国債市場での海外投資家のプレゼンスについて次の3つを紹介します。1つ目に、日本銀行公表の資金循環統計によれば、令和3年12月末において、海外投資家による日本国債の保有割合(ストックベース)は14.3%、保有額は175兆円ですが、短期債に限ればその割合は61.4%となり、短期債の保有割合の高さが特徴の一つとして挙げられます。足もとで日本の短期債の利回りがマイナスにも関わらず、海外からの投資が盛んな主な理由は、「海外投資家の投資目的別分類」でも述べた通り、ドル等を保有する海外投資家が通貨ベーシススワップを利用すると、ドル等の出し手である当該投資家がプレミアムを享受できる状況が続いており、このプレミアムを加えた日本の短期債の利回りは、海外投資家の自国の短期債よりも魅力的な水準となるためです。2つ目に、海外投資家は、保有割合に比べて、流通市場でのプレゼンスが大きいことが知られています。例えば、日本取引所グループの投資部門別取引状況によれば、近年では国債現物取引の3割超が海外投資家によるものであり、国債先物取引に至ってはその比率は6割を超えています。3つ目に、日本国債IRで面談した海外投資家からは、「現地時間において、あらかじめ価格や数量を指定して証券会社に入札を依頼し、東京時間で実際に入札を代行してもらう」との意見もよく聞かれ、流通市場だけでなく発行市場においても海外投資家が積極的に参加している点が挙げられます。のように見ているのか、以下紹介します。昨年10月の岸田政権の発足以降、同政権の掲げる「新しい資本主義」の具体的な政策、同方策の経済効果、新型コロナウイルス感染症対策、日本経済の見通しなどについて、多くの海外投資家から質問がありました。一部の海外投資家からは岸田政権に対する期待も聞かれました。他方で、高齢化や少子化などの構造的な問題への対応に関心を示す海外投資家もいました。一部の海外投資家は、日本の債務残高対GDP比に関し、中長期的なリスクとなる懸念を抱いており、「信用力を維持する取組が大切」といった意見が聞かれました。また、「今の格付に関わらず、日本経済・財政状況を総合的に判断して日本国債に投資しているが、現状よりも格下げとなれば、投資スタンスを見直さざるを得ない」という意見も聞かれました。2022年以降、日本国債と利回りの上昇が続く米国債とを比較し、日本国債が低利回りである点を指摘する海外投資家もいました。他方で、日本国債の流動性(換金のしやすさ)の高さを評価する意見が多く聞かれました。このほか、今後も借換債を含めた日本国債の大量発行を余儀なくされる中で、日本銀行が金融政策の正常化に向かった場合に備えて、日本国債の安定消化に向けた取組に関心を示す海外投資家もいました。海外投資家から見た日本最後に、日本国債に投資する海外投資家が日本をどおわりに国債発行当局としては、引き続き、海外投資家による日本国債の安定的な保有に向け、引き続ききめ細やかな情報を提供していくことが重要であると考えています。

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