ファイナンス 2022年5月号 No.678
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個人①経済制裁(非軍事制裁)の有効性②金融制裁の有効性③特定対象制裁()の有効性他人名義等による潜脱の容易性→BO・国籍ロンダリングの規制強化外交上の措置として周辺国との関係に依存→アウトバウンドの国境管理強化米国単独制裁乱発によるドルの地位低下→FATF等の場での各国協調強化送金規制等の対象ミロシェビッチ前ユーゴスラビア大統領及び関係者タリバーン関係者等テロリスト等イラク前政権の機関等・イラク前政権の高官又はその関係者等コンゴ民主共和国に対する武器禁輸措置等に違反した者等スーダンにおけるダルフール和平阻害関与者等北朝鮮のミサイル又は大量破壊兵器計画に関連する者北朝鮮に関連する国際連合安全保障理事会決議に基づく資産凍結等の措置の対象となる者国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するために講ずる資産凍結等の措置の対象となる北朝鮮の核その他の大量破壊兵器及び弾道ミサイル関連計画その他の北朝鮮に関連する国際連合安全保障理事会決議により禁止された活動等に関与する者北朝鮮の核関連、弾道ミサイル関連又はその他の大量破壊兵器関連の計画又は活動に貢献し得る活動北朝鮮に住所等を有する個人等に対する支払ソマリアに対する武器禁輸措置等に違反した者等リビアのカダフィ革命指導者及びその関係者シリアのアル・アサド大統領及びその関係者等クリミア「併合」又はウクライナ東部の不安定化に直接関与していると判断される者並びに「ドネツク人民共和国」(自称)及び「ルハンスク人民共和国」(自称)関係者と判断される者資産凍結等の措置の対象となるロシア連邦の団体及び個人ロシア連邦の特定銀行等による証券の発行等ロシア連邦の政府その他政府機関等による証券の発行等資産凍結等の措置の対象となるベラルーシ共和国の個人及び団体中央アフリカ共和国における平和等を損なう行為等に関与した者等イエメン共和国における平和等を脅かす活動に関与した者等南スーダンにおける平和等を脅かす行為等に関与した者等イランの核活動等に関与する者イランの核活動又は核兵器運搬手段の開発に関連する活動核技術等に関連するイランによる投資を禁止する業種マリ共和国における平和等を脅かす行為等に関与した者等実施時期国際平和のための国際的努力への寄与米、等との協調)国連安保理決議号・号・号平成年月~平成年月~平成年月~国連安保理決議号平成年月~国連安保理決議号平成年月~国連安保理決議号国連安保理決議号平成年月~国連安保理決議号平成年月~国連安保理決議号・号・号・号・号・号・号・号・号平成年月~平成年月~国際平和のための国際的努力への寄与(米、等との協調)国際平和のための国際的努力への寄与(国連安保理決議号の任意措置への対応)国際平和のための国際的努力への寄与国連安保理決議号国連安保理決議号・号・号国際平和のための国際的努力への寄与(米、等との協調)平成年月~平成年月~平成年月~平成年月~平成年月~平成年月~国際平和のための国際的努力への寄与(米、等との協調)令和年月~平成年月~令和年月~令和年月~平成年月~平成年月~国連安保理決議号平成年月~国連安保理決議号国連安保理決議号平成年月~     〃     〃国連安保理決議号国連安保理決議・号令和年月~実施根拠個人個人・団体個人・団体個人・団体個人個人・団体個人・団体うち団体は号、個人・団体は国際協調に基づいて措置済み個人・団体個人・団体個人・団体団体団体個人・団体個人・団体個人個人個人・団体(資金使途規制)対象者数(資金使途規制)(支払の原則禁止)個人・団体個人・団体個人・団体ファイナンス 2022 May. 55図表4:これまで我が国においてとられた資産凍結等の措置と、その根拠等(網掛けがFATF基準でカバーされているもの)図表5:「制裁の有効性」を巡る論点整理(筆者作成)(財務省資料をベースに、筆者作成) 2.国境管理:地下資金対策の盲点制裁履行を徹底しない友好国国財務省OFACによるもの。第8章参照)は、時としてFATF基準を軸とした地下資金対策の国際協調の枠組みと緊張関係をもたらすこともあり、また、金融機関等のコンプライアンスの観点からも、重大な関心事項である。もっとも、その乱発がなされればドルの地位低下を推し進める潜在的要因の一つとなり、ひいては、金融制裁全体の実効性を減殺させる可能性があるとも指摘される。この点に関しては、後述する。以上の理解を前提に、冒頭において提示した「制裁は効果があるのか」という大きな問題意識に立ち返ってみよう。その実効性に疑義を投げ掛ける言説を、本稿が対象とする地下資金対策上の金融制裁に関して分析すると、(1)経済制裁一般に当てはまる指摘と、(2)それがカネに関わる金融制裁であるが故のもの、そして、(3)金融制裁の中でも、更に特定の対象に限定されたTFSであることに起因する論点と、3つのレイヤーに属する議論が混在している(図表5)。以下においては、これら各々について問題の所在を整理し、それに対してどのような対応が可能であるかを検討していく。ヒト・モノを含む経済制裁の実施一般に関し、一部の国が実施に不熱心であることが、その実効性を低下させているとの指摘がなされることがある(第1レイヤーの問題)。実際、例えば対北朝鮮制裁に関して、中国が日本や米国程には真摯でないである可能性は、両国が基本的には友好関係にあることから、容易に想定される。中

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