ファイナンス 2022年5月号 No.678
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フェニルアラニン+チロシンバリンメチオニン+システインフェニルアラニン+チロシンバリンロイシンメチオニン+システイントリプトファンスレオニンイソロイシントリプトファンスレオニンイソロイシン動物の肉が好きだからあるから加工食品に抵抗が具体的な料理が思いたんぱく質は肉や魚など浮かばないからから採りたいからないから聞いたことが価格が高い、または高そうだから何が入っているかよく分からないから人工的な気がして、 食欲がわかないから美味しくない、または美味しくなさそうだからわざわざ食べる必要がないから210 リジンリジンファイナンス 2022 May. 47(図表11)食事と骨折リスクの関係(図表15)地球温暖化/気候変動問題を踏まえて自身の行動を変えるか※タンパク質の生成において、9種の必須アミノ酸をバランスよく接種することが必要。バランスが悪いと、最も少ないアミノ酸の量までしか体内で利用できない。(出典)一般社団法人Jミルク「食品に含まれる「たんぱく質」の“質”から見た環境負荷の再検討」「動物性食品と植物性食品」、Risksofischaemicheartdiseaseandstrokeinmeateaters,fisheaters,andvegetariansover18yearsoffollow-up:resultsfromtheprospectiveEPIC-Oxfordstudy、Vegetarianandvegandietsandrisksoftotalandsite-specificfractures:resultsfromtheprospectiveEPIC-Oxfordstudy.15.78.231.7(出典)クロス・マーケティング「代替肉・代替タンパク質に関する調査」、経済産業省「フードテック~世界に勝てる食文化ベンチャー育成~」、BCG[サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査結果」充分なタンパク質を生成できない場合ヒスチジン充分なタンパク質を204060(%)0喫食経験あり、今後も食べたい喫食経験なし、食べてみたい(図表13)代替肉を購入しない理由(%)3020100(注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。・これまで述べてきた通り、代替肉の活用は様々な社会課題の解決に貢献し得ると考えられるが、懐疑的な声もある。・現時点での代替肉市場は植物肉が大半を占めているが、一般的に、動物性食品は必須アミノ酸をバランスよく含む良質なタンパク質である一方、植物性食品はリジンなど不足している必須アミノ酸があるため、他の食物で補う必要がある(図表9)。・また、植物性食品のみを接種する場合には、ビタミンB12やカルシウム、鉄などといった栄養素も不足する可能性が高い。近年の研究においては、ベジタリアンの方が出血性脳卒中や骨折のリスクが高いことが指摘されている(図表10、11)。・上記のような問題点は挙げられるものの、食料供給および環境保全の観点から、植物性食品を含む代替肉の消費割合を増やすことは必要である。今後は「植物性食品は良い」「動物性食品は悪い」とった二元論的な対立ではなく、代替肉を活用しつつ、植物性食品と動物性食品が互いに補完・共生する最適な食品マトリックスを模索していくことが必要であろう。(図表9)アミノ酸の桶の理論・最後に、国内市場において、今後、代替肉がどのように普及していくかを考えてみたい。日本国内では代替肉を食べたことがあり、今後も食べたいと考える人の割合は15.7%と少なく、代替肉を購入しない理由としては、「わざわざ食べる必要がない」ことや、味や安全性への懸念が挙げられている(図表12、13)。・味や安全性への懸念については、植物性タンパク質の加工技術や繊細な食味の再現技術を生かすことで不安を払拭する取り組みが既に実施されているため(図表14)、そうした取り組みを広く周知して消費者の理解を深めることが必要であろう。・また、食べる必要性の訴求に関しては、環境保全や動物愛護といった倫理面から代替肉の必要性を訴えても特定層向けの商品に留まる可能性が高い。環境保全のために自身の行動を変える人の割合は2割以下と低いのが現状である(図表15)。企業が、食品を選ぶ際に重要視される味や価格・手軽さ・安心感といった基本的な価値の提供に一層取り組み、普段の食生活の一部として代替肉が受け入れられることを期待したい。(図表12)代替肉の喫食経験と喫食意向生成できる場合ヒロスイチシジンン植物性タンパク質の加工技術80100喫食経験あり、今後は食べたいと思わない喫食経験なし、食べてみたいと思わない繊細な食味の再現技術44.4(図表10)食生活と疾患発症率の関係ハザード比(95%CI)1.61.41.210.80.60.40.20(図表14)代替肉を扱う企業例強み肉食者魚食者ベジタリアン出血性脳卒中全脳卒中P=0.06P=0.04具体例DAIZ株式会社:一般的な代替肉は添加物で食味を整えているが、大豆品種や発芽条件を変えて、うまみ成分のバランスを操作することで添加物フリーの安全で味にも拘った代替肉を提供する。プラントベース株式会社:「美味しいから」プラントベースを選ぶ世界、をコンセプトに、「うまみ」をベースにした植物性食品の研究・開発を実施する。ハザード比(95%CI)2.5肉食者魚食者ベジタリアンビーガン1.50.5骨折全体P<0.00160代50代40代30代20代(%)020腕骨折P=0.049股関節骨折P<0.001足骨折P=0.04540自分の行動を変えた行動をかえたいとは思っているが、変わっていない特に自分の行動は変わっていない1006080コラム 経済トレンド 95植物肉のみに依存することへの懸念代替肉普及に向けた展望

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