ファイナンス 2022年5月号 No.678
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鶏000ⅡⅣⅢ牛豚鶏卵植物性(図表2)代替肉の製品例・普及状況の比較(図表4)タンパク質の変換効率(図表7)肉の消費量を減らした理由(図表3)タンパク源別の環境負荷比較(図表8)総エネルギーに対する植物性 タンパク質摂取の割合と死因率との関連ハザード比(95%CI)1.41.210.80.60.40.20(出典)農林水産省「2050年における世界の食料需給見通し」、NRI「代替肉業界の分析と日本が取り組むべき方向性」「プロテインクライシスがもたらす食品業界の地殻変動」、(mUSD)3,5003,0002,5002,0001,5001,0005000(出典)NRI「代替肉業界の分析と日本が取り組むべき方向性」、SOMPO未来研究所「代替タンパク質の拡大と代替タンパク質をめぐる議論」、国立がん研究センター「動物(図表1)所得階層別の畜産物需要量の見通し(億トン)1614121086420・今後の人口増加と1人当たり畜肉消費量の増加により、2010年から2050年にかけて世界全体の畜肉消費量が1.8倍、特に低所得国では3.5倍に増加すると予測されている(図表1)。食肉需要の増加に畜産物の増産が追い付けば問題ないが、現行の畜産業は環境への負荷が大きく、持続可能性に関する懸念がある。・そこで、新たなタンパク質の供給源として期待される食材の一つが代替肉である。代替肉には植物肉・微生物発酵肉・培養肉の3種類が存在し(図表2)、従来の家畜肉よりも環境への負荷が小さい。家畜の飼育には膨大な水と飼料が必要で、飼料作物の栽培には広大な土地を必要とする。また、家畜の消化管内発酵から発生するメタンなどGHG排出量も大きい(図表3)。・また、肥料や飼料・培養液など生産過程で投入するタンパク質量に対して、最終的な食料として得られるタンパク質量の割合を比較すると、代替肉は70%以上と非常に変換効率が高く(図表4)、効率的にタンパク質を得られる方法と言える。・代替肉を扱う企業数および投資件数は国際的に年々増加しており(図表5、6)、注目を集めている。・国際的な代替肉ブームの背景には、環境負荷の小さい新たなタンパク源としての期待だけでなく、動物愛護や健康志向の高まりがあると考えられる。米Gallupが2020年に実施した調査では、米国人の4人に1人が、過去1年間に肉を食べる量を減らしたと回答しており、その理由として、健康志向、環境問題、食の安全性、動物愛護が挙げられている(図表7)。・最も重要視されている健康という観点では、動物性タンパク質の代わりに大豆食品などの植物性タンパク質をより多く摂取すると死亡リスクが低下するという研究が数多く報告されており(図表8)、植物性タンパク質は健康に良い影響をもたらすとの見方が強い。(図表5)代替肉を扱う企業数三井物産戦略研究所「培養肉生産技術の課題と今後の展開」(社)7006005004003002001000植物代替微生物発酵201020112012201320142015201620172018201920202021(図表6)代替肉への投資概況投資額投資件数20102011201220132014201520162017201820192020性・植物性タンパク質の摂取と死亡リスクとの関連」高所得国中所得国低所得国1.8倍1.633.291.313.053.473.732010年2015年培養その他(件)2001501005004.653.5倍1.6倍4.95(%)100500751.3倍4.382050年植物肉培養肉生成方法肉を植物性の食材で置き換えたり、大豆等を粉砕して押出成形することで肉の食感等を再現する。・豆腐ハンバーグ・がんもどき・大豆ミート特徴製品例植物代替微生物発酵微生物を発酵してタンパク質を生成したり、酵素や風味分子など代替肉の副原料となる特性の成分を生成する。細胞を培養することで“本物の”肉を再現する。・培養・ステーキ肉のサシ・ヘム加工物を含む生鮮肉・培養7019.68.5豚副因理由ではない主因健康のため環境のため食の安全のため動物愛護のため家族の影響多くの人がそうしているから宗教的な理由0(%)204060培養ステーキ肉フォアグラ(Liter/100g protain)(m2/100g protain)畜産肉牛豚鶏卵植物性微生物細胞培養微生物細胞培養水利用3.8牛120080100総死亡P=0.01総エネルギーに対する植物性タンパク質の割合少ないⅠ(kgCO2eq/100g protain)代替肉牛豚鶏卵植物性微生物細胞培養GHG土地利用20050循環器疾患死亡心疾患死亡P=0.02P=0.002多いⅤ代替肉が必要とされる背景現状の代替肉市場 46 ファイナンス 2022 May.大臣官房総合政策課 調査員 中山 晃一/山口 晶子本稿では、代替肉市場の現状と可能性について考察を行った。コラム 経済トレンド95代替肉市場について

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