ファイナンス 2022年5月号 No.678
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Co-WIN上ではリアルタイムの情報が公表されている財政演説を行うシタラマン財務大臣(PTI Newsより)*5) 携帯番号を持たない者(高齢者、子ども等)であっても、家族で1台携帯電話があれば、家族代表者の携帯番号により、家族全員分の接種予約を行うことが可能となっている。ウ 「Co-WIN」Co-WINは、インド政府がUNDPと連携して開発したワクチン接種のためのポータルサイトで、携帯端末からワクチン接種予約を容易に行えるシステムを提供しています。利用者は、携帯番号や個人番号があれば*5、Co-WINを通じて近所の接種会場の空き状況を確認し、自分の希望するワクチンを選択して接種することができます。また、ワクチン接種後は、Co-WIN上で接種証明書をダウンロードすることもできます。さらに、Co-WIN上では、国民一人ひとりに付与されている個人番号と紐付けることにより、国全体・各州の接種状況をリアルタイムで管理でき、接種統計を即日公表するといった対応が可能となっています。(3)デジタル化の先にあるものエ 「e-RUPI」e-RUPIは、昨年導入されたばかりのキャッシュレス決済プラットフォームで、主に行政・福祉サービスの提供に利用されています。サービス利用者は、銀行口座を保有していなくても、携帯電話があればSMSなどにより政府から電子バウチャーを受け取り、サービスを享受することができます。例えば、政府がAさんの治療費を負担する場合、Aさんに対して治療費と同じ金額で特定の病院で使用可能なe-RUPIを発行、提携銀行を通じてAさんの携帯電話にQRコードまたはSMSを配信します。すると、AさんはQRコードまたはSMSからe-RUPIを取得し、提携病院でサービスを受けた後、e-RUPIで支払いを済ませることができます。モディ首相はローンチイベントにおいて、e-RUPIは、国内のデジタル取引において給付金・補助金等の直接給付(Direct Benefit Transfer)の効果を高めるための大きな役割を果たし、新次元のデジタルガバナンスとなると述べています。これまでインド政府によるデジタル化の試みを見てきましたが、なぜインド政府はデジタル化をそこまで推進するのでしょうか。2015年に開始した「デジタ 44 ファイナンス 2022 May.コラム4財務省のペーパーレス化?インド財務省は2021年度から国会に提出される予算書案の印刷を止め、シタラマン財務大臣もタブレット端末上のスピーチを読み上げる形で財政演説を行ったことで、ペーパーレス化がちょっとした話題になりました。予算書や財政演説等の予算関連資料は、財務省HPのほか、「UnionBudget」という名前そのままのアプリで簡単に参照することができるようになり、紙文化のあるインド政府で思い切ったペーパーレス化に踏み込んだなと思いました。しかし、実際にインド財務省内でペーパーレス化が進んだかと言えばそのようなことはなく、財務官僚の机の上には今でも書類が山積みにされており、基本的に決裁は書類で行われているようです。ペーパーレス化が一夜にしてできないのはどこの国も同じなのでしょうか。

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