ファイナンス 2022年5月号 No.678
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*4) 2021年10月時点。https://www.npci.org.in/what-we-do/upi/product-statistics観光地でもUPIを利用したQRコード決済が可能 42 ファイナンス 2022 May. 4 デジタル社会の実現に向けた先進的な取組みモディ首相は様々なスローガンを打ち出すのが得意と言われていますが、デジタル分野では「デジタル・インディア」と呼ばれる政策を推進しています。本章では、インドにおけるデジタル経済を概観し、行政のデジタル化に向けた先進的な取組みについてみていきたいと思います。インドのデジタル化は、主に携帯電話やインターネットの普及とともに進展しました。インドにおける携帯電話の契約者数は11.7億人(2021年9月末時点)とされ、人口比で見ると国民の8割以上に携帯電話が普及していることとなります(スマートフォンの契約者はその半分で4割以上)。インターネット利用者数は8.3億人(2021年9月末時点)とされ、2011年の1億人と比較すると、実に10年間で8倍以上に増加しています。データ通信量は多くないのではないかと思われる方がいるかもしれませんが、電気通信規制庁の統計によると、利用者一人当たりの月間通信量は14.7ギガバイトもあります。これには、国際的にも安価な利用料金(2021年6月時点の平均価格1ギガ当たり0.13ドルとなっており、これは世界最安とも言われています)に加え、モバイル・サービスの増加が寄与しています。また、携帯端末やインターネットの普及とともに、デジタル決済も増加しており、決済回数は過去5年間で6倍に増加し、今では全国の3分の1の世帯がデジタル決済を利用しています。特にコロナ禍では決済のデジタル化が進行し、2019年度から2020年度にかけて、取引量は30%近く増加しました。デジタル決済増加の背景には、政府主導のデジタル決済共通基盤であるUPI(Unified Payments Interface)の普及があると言われており、コラム3で詳しくご紹介しています。コラム3UPIとは?UPIは、2016年4月に導入された政府主導のデジタル決済共通基盤で、主としてP2P(Peer-to-Peer)送金に利用されています。現在は、261の銀行で利用可能となっており、利用回数は月40億回に上ります*4。利用者は、銀行口座と口座に結び付いた電話番号さえあれば利用でき、支払先の携帯番号、QRコード、仮想アドレス(VPA)、銀行口座のいずれかを入力することで、24時間365日即座に手数料ゼロでリアルタイムの送金を行うことができます。インドに駐在していても使用頻度は高く、地元のスーパーや小売店での会計から、公共料金や観光地での入場料の支払い、立替払いの精算等、様々なシチュエーションで活用しています。なお、インドでは、UPIシステムとリンクした決済アプリが人気で、実際の支払いはPhonePe、Paytm、Google Pay等のアプリを利用して行われます。現在では国を超えて、シンガポール、ブータン、ネパール、UAEでも店舗によってはUPIが利用可能となっています。(1)デジタル経済の現状*4

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