ファイナンス 2022年5月号 No.678
44/88

3 コロナ対応の変遷インドのコロナ対応は、この2年間で大きく変化してきました。本章では、厳しいロックダウン措置から感染対策と経済のバランスを重視する方針への転換に加え、インドにおけるワクチン接種の普及について見ていきたいと思います。アンドラ・プラデシュ州食堂の店内の様子(左)とターリー(右)プーリー・パパドを載せ、カレーを3〜4種類入れてくれます。ここでは多くの人が素手で食事をしており、筆者もそれに倣って素手で食べますが、これにより料理が不思議と美味しくなるのです。定食の料理はお代わり自由となっており、カレーやライスがなくなると、すかさずサーバーが目の前に来て椀こそばの如く何回でもお代わりを皿に入れてくれます。東京の都道府県アンテナショップはオシャレなイメージがありますが、インドの州食堂の雰囲気、いかがでしょうか。(2)感染対策と経済のバランスの維持 40 ファイナンス 2022 May.(1)厳しいロックダウン措置による封じ込めインドのコロナ対応は、世界一厳しいとも言われたロックダウン措置による感染抑制に始まりました。全土ロックダウン措置は、外出禁止や一部の生活必需品や医薬品を除く店舗・商業施設の操業停止等を内容とし、モディ首相が発表を行った日(2020年3月24日、当時の新規感染者数は100人前後)から適用され、その後2ヶ月以上にわたり継続されました。この間、自動車販売台数はほぼゼロで推移し、失業率は23.5%にまで達するなど、生産面・雇用面で経済に大きな影響を与えました。その後ロックダウン措置は段階的に緩和されましたが、生産減少の影響は年後半まで続き、2020年度の経済成長率は-6.6%と40年ぶりのマイナス成長となりました。他の新興国(中国:2.2%、ベトナム:2.9%、インドネシア:-2.1%、ブラジル:-3.9%)と比較してもマイナス幅は大きく、経済優先を掲げるモディ政権にとっては大きな痛手となりました。経済への影響が極めて大きいことが明らかになって以降、インド政府は感染対策と経済のバランスを重視する方針に転換しました。2021年4~5月には、デルタ株による「第二波」と呼ばれる激しい感染拡大が発生しましたが、モディ首相は全土ロックダウンには踏み切らず、行動規制を含む感染対策は州政府・連邦直轄領政府の方針に委ねられました。その結果、各地の感染状況や許容度に応じた方針が取られ、感染者数は第一波をはるかに上回ったものの、経済やビジネスへの影響は第一波より小さく(失業率は最大で11.9%)、その後の早期の経済回復へとつながりました。コラム1州食堂(バワン食堂)36の州・連邦直轄領から構成されるインド、その首都デリーには、各州政府のデリー事務所(バワン)が運営する様々な食堂があり、一般にも開放されています。中でもアンドラ・プラデシュ州食堂(APバワン食堂)は、安く美味しい料理が食べられるということでデリー市民の人気を博しており、昼時ともなれば、店内は満席。APバワン食堂では、ターリーと呼ばれる定食セット(ベジタリンかノンベジタリアンを選択)を注文すると、サーバーが来て皿にライス・

元のページ  ../index.html#44

このブックを見る