ファイナンス 2022年5月号 No.678
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ファイナンス 2022 May. 35桜樹の管理を行う渡邊技能長養成地より通り抜け通路への桜樹の移植春の風物詩 桜の通り抜け私は平成3年4月に入局し1ヶ月間の研修の後工作課営繕係(現施設課保全係)という部署に配属されました。配属されて初めての仕事、それは先輩職員に桜の通り抜け通路に連れて行かれ桜樹についた毛虫を取ること(害虫駆除)でした。思い返せば配属された時から桜に携わっているのだなとしみじみと感じます。桜にまつわる■といえば「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」が有名です。桜は枝を切るとそこから腐りやすくなるので切らないほうがよく、梅は枝を切らないと無駄な枝がついて花が咲きにくくなるので切ったほうがよいとされているためで、歴代の桜の担当者は■どおり枝をできるだけ切らずに支柱や縄での吊り上げ等で手入れを行っていました。ただ、これまでの経験上、支柱で押し上げたり、吊り上げたりすると負担がかかってしまうのか、その枝は枯れることが多く、逆にそのようなことをしなくていい程度に枝を切ってあげたほうが桜樹に負担をかけず良いのではないかとの考えから、私が担当者になってからは花が咲く前までに切除(剪定)を行うようにしています。これは、桜の通り抜けで観覧されるお客様が垂れた枝や支柱により被害に遭うことなく安全に通行していただくためでもあります。また、冒頭に書いた害虫駆除ですが、春に発生する毛虫と秋に発生する毛虫がいます。いずれの毛虫も博物館を訪れるお客様や工場見学にお越しになるお客様が被害に遭わないよう気をつけて駆除していますが、秋に発生する毛虫に関しては一般的に桜樹の葉を全て食べつくされると来春に花が咲かなかったり、開花期がずれたりするおそれがあるといわれているため特に気を付けて駆除しています。桜の通り抜けの桜は本数が多く、また多くの品種が植えられています。品種を増やすためには購入することになりますが、購入した後通り抜け通路に直接移植する場合と、一旦養成地に移植して時期をみて通り抜け通路に移植する場合があります。本数を増やすためには、購入する場合と接ぎ木を行う場合があります。購入する場合は先述と同じく直接通り抜け通路に移植するか養成地に移植しますが、接ぎ木の場合は通り抜けに移植できる大きさに育つまで養成地にて育成します。現在、通り抜けにある桜は樹齢50年を超えるような古木が多くあります。一般に桜の寿命は40〜60年といわれており、品種や本数をどう維持していくか難しい課題ではありますが、これからも多くのお客様に安全に桜の通り抜けを楽しんでいただけるよう努めていきたいと思っています。

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