ファイナンス 2022年5月号 No.678
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*10) 例えば、参議院総務委員会(平成19年3月29日)において、恩給制度と公的年金制度の差異につき、次のように答弁している。 ○伊藤基隆君 …政府が推進しようとしている公的年金の制度改革、被用者年金の一元化と将来の恩給制度との関係について、現時点ではどのような検討課題があるとお考えなのか、御見解を伺います。○政府参考人(戸谷好秀人事・恩給局長) …御案内のとおり、恩給制度でございます。国家補償の性格を有する制度ということで、相互扶助の精神に基づき、保険数理の原則というものがございます公的年金制度とは基本的な性格は異にしているというふうに考えているところでございます。… 加えて、上記委員会においては、恩給の国家補償としての性格についても、次の通り答弁されている。○伊藤基隆君 …恩給制度は様々な経過をたどり、恩給法は度重なる改正を経て今日に至っております。国家が戦争に直接動員した人々、そのことで犠牲を受けた人々に対して国家補償的な性格を持つ現在の恩給制度を最後まで全うさせる、過去の経緯からもこのことが大切だと考えますが、総務大臣に恩給制度について基本的な見解を伺います。 将来に向かってこの制度を維持していくためには、国民の理解を得るため、より一層の努力が必要となってきますが、特にこの点についての御意見をお聞かせください。○国務大臣(菅義偉総務大臣) 恩給は、元々明治初期に軍人を対象とする年金制度として発足したものであって、公務のために死亡したとき、公務のために傷病を負ったとき、また長年忠実に勤務した後退職したときに、公務員の国に対する貢献、奉仕に報いるため、国が公務員及びその遺族に対し給付を行う年金制度であります。こうした点から、恩給は基本的性格として国家補償の性格を持っているものと考えています。 また、現在、ほとんどの受給者は、さきの大戦で生命をささげて国のために尽くされた旧軍人とその遺族であります。国としては、これらの受給者の方々に対し、国家補償の考え方により誠意を持って処遇すること、このことが極めて重要であると私は認識をいたしております。今日の日本の平和や安定、これがこうした先輩の皆さんの犠牲の上に成り立っていることを私どもは決して忘れることはできないというふうに思います。 恩給が、生命をささげて国に尽くされた方々に対し誠意を持って処遇に当たるものであることについて、若い世代も含め国民の理解を一層深めてもらうように、私ども総務省としても広報に努めてまいりたいと考えているところであります。*11) 恩給金庫法解説によれば、恩給金庫の貸付対象として「…金庫に於て資金の貸付を為すものの範囲は、…三 恩給法以外の法令に依る恩給受給者 であるが、第三の恩給法以外の法令に依る恩給受給者中には、省令以上の法令に基く共済組合年金受給者をも包含するものと解釈してゐる。…」とあるため、その当初において、国家補償としての性格等を有する恩給等のみを対象としていたわけではないようである。したがって、今回の改正により、恩給担保貸付は、その制度創設時よりも厳密な形に対象を縮小したとも言えるだろう。*12) 恩給担保法メモによれば、恩給法を準用する日本専売公社法(昭和23年法律第255号)や日本国有鉄道法(昭和23年法律第256号)等を想定していたようであるが、「…恩給法その他の法令の範囲は相当広般多岐に亘つている…」とあり、非常に幅広く読める規定であったようである。ファイナンス 2022 May. 29恩給担保貸付の原則廃止にあたって制度とは異なるため*10、廃止対象からは除いたというものである。なお、一部廃止であって、恩給公務員期間を有する者に係るもの等については、引き続き貸付対象とするという点に鑑みれば、恩給担保貸付は、累次の制度改正を経たことで、結果的に国家補償としての性格等を有する恩給等を対象に必要な資金を供給するという、その制度創設時の姿に立ち返ることとなった*11、と言えるのかもしれない。さて、今般の改正の趣旨は上記の通りであるが、恩給担保法第2条第1項第1号は今回改正されず「恩給法…その他の法令に規定する恩給」として残るところ、この「その他の法令」として、地方公共団体が定める条例も含まれると解するべきかというお問い合わせを受けることがあったので、この部分についても補足的にお答えしておきたい。この「その他の法令」をどう解するべきかであるが、現行の(今般の改正前)第2条第1項第3号は「条例により地方公共団体から給される年金で前二号に掲げるものに準ずるもの」としているため、ここにいう法令に条例は入らないと考えられる。また、恩給公務員期間を有する者に係るものに限る中で、同法第2条第1項第3号は削られていることも踏まえれば、条例に係るものを、改正後に「その他の法令」として読むということは、一般論としても不適当と考えられるだろう。*12なお、より法改正の趣旨を踏まえる形で述べるのであれば、次のようになろう。すなわち、今般の法改正においては、地方公務員の場合、今後、恩給担保貸付の対象とする者に関し、地共済施行法第2条第1項第33号に規定する恩給公務員期間を有する者に係るものに限るという形で、法令上も定義付けをした改正を行っている。その点を踏まえれば、恩給担保法もさることながら、地共済施行法にいう「恩給公務員期間」と解釈し得ないような性質のものをその対象と解しようとする場合は、上記改正内容とも齟齬を来すおそれがあるため、対象とはならないと解することが望ましいであろう。ちなみに、条例と「その他の法令」に関して、町村職員恩給組合法(昭和27年法律第118号)に基づく

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