ファイナンス 2022年5月号 No.678
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6恩給担保貸付の原則廃止へさて、こうして戦後に改めて復活した恩給担保貸付であったが、その後も共済・公務員災害補償系がその対象として追加(拡充)されていった。そこに加えて、戦後の社会保障制度整備の一環として、厚生年金等が整備されていく中、昭和50年には年金担保貸付制度が整備されることとなる。*9) なお、年金担保貸付制度は、当初は年金福祉事業団において行われ、その後の実施機関の変遷を経て、最終的に、独立行政法人福祉医療機構が行うに至っている。 26 ファイナンス 2022 May.(2)恩給法第11条の「別に法律で定める金融機関」(3)公庫の貸付は事業資金に限られているが、恩給給は殆んど全面的に復活…同時に恩給法第11条の規定が改正され恩給を受ける権利を国民金融公庫及び別に法律で定める金融機関に担保に供することができることとなつた。…これらの一連の措置を契機として恩給関係者の間に恩給金庫復活論が急速に高まるに至つた。その狙とするところは財政資金許りでなく広く民間の資金を導入し、恩給を担保として事業資金たると消費資金たるとを問わず低利の資金を豊富に供給せんとするものの如くであつた。これに対しては次の如き理由で大蔵省としては反対の立場を取つたのである。恩給金庫が行わんとする業務と国民金融公庫のそれは金融上の性質が必ずしも異らず公庫を活用することで足り経費その他の点から考えて独立の機関を設ける積極的理由が見出し難い。現在の財政事情からみて、恩給受給者という特定のもののために特別の機関を設けて多額の財政支出をするだけの余裕がない。前記の如き狙については、民間資金の導入そのものに根本的問題がある許りでなく、低利の資金調達は極めて困難である等々である。…昭和29年度緊縮予算の編成が進み、…公庫に対する新規資金のうち20億円が公庫が行う恩給担保貸付資金に充てられることとなり、…恩給金庫の設立は不可能となつた。かかる客観状勢の変化もあり、恩給担保金融に対する措置として次の如き方針が再確認され、関係方面との折衝が重ねられた。(1)公庫の行つている恩給担保金融の方法は代理受領の方法であるが、法律関係が不安定であるので債権確保の見地から物権化するため旧恩給金庫法と同趣旨の立法措置を行う。とは広く一般金融機関を指定する。担保貸付に限つて消費資金の貸付を認める。以上の措置は単行法によつて行う…併し、…一般金融機関の指定は見送るとともに国民金融審議会の委員に国民大衆の利益代表を加え、これに恩給受給者の代表を充てることを予定し立案が進められることとなつた。…」この背景としては、(1)年金受給者が高利貸しから年金証書を担保とし、高利の資金を借り入れたことが社会問題化したことに加え、(2)公務員には既に同様の制度が存在している点についての官民格差是正が求められたこと等があったとされ、これにより、官民共に同様の制度を整備するに至った。*9しかしながら、年金担保貸付制度は、平成22年の行政刷新会議の事業仕分けにおいて、・年金担保貸付制度を利用した者が、その借入金の返済期間中に生活保護を受ける等生活保護制度の立場から問題事例が生じていること・年金給付を担保に貸し付ける仕組み自体が問題であること等の理由から廃止すべきとされ、平成22年12月の閣議決定により廃止することとされた。上記閣議決定後、年金担保貸付制度については段階的に事業規模の縮減を図るとともに、令和2年の年金制度改正により、令和4年3月末で新規の申込受付を終了することが決定した。これを踏まえ、国家公務員等を対象として、日本公庫及び沖縄公庫が行っている恩給担保貸付についても同様に、官民不平等を防止する観点から、一部廃止(共済・公務員災害補償系を担保とする恩給担保貸付を廃止)することとなった(これにあたっては、令和元年10月23日の財政制度等審議会財政投融資分科会において、その廃止の方向性を説明・公表している)。

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