ファイナンス 2022年5月号 No.678
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量 量ファイナンス 2022 May. 15フェデラル・ファンド(FF)市場およびFFレート(FF金利)入門図表7 金融危機以降のFF市場:IORB(IOER)の効果FFレート図表8  金融危機以降のFF市場:リバース・レポ・ファイシリティ*23) ここでの議論はSwanson(2022)を参照しています。図表6 リバース・レポ・ファシリティ利用額の推移(10億ドル)2000180016001400120010008006004002000201420152016201720182019202020212022IORB市場で決まるFFレートディスカウントレートIORB市場で決まるFFレートON RRPの効果FFレート3.3  FF市場における需要曲線と供給曲線を用いた整理図表6はリバース・レポ・ファシリティの利用額の推移を示していますが、近年、その利用が増えていることがわかります。前述のようにリバース・レポ・ファシリティがどれくらい活用されるかは、MMFなどのカウンター・パーティがどのくらい応札するかに依存します。Afonso et al.(2022)はFFレートがリバース・レポ・レート(すなわちフロア)に近づいている場合、FF市場で運用することとFRBに預け入れることの差異がなくなるので、リバース・レポ・ファシリティの利用が増加する点を指摘しています。前述のように市場で決まるFFレートはFF市場における需給によって決まりますから、例えば、MMFなどの余剰資金が増えることにより、FFレートが低下し、リバース・レポ・レートとの差異が低下することでリバース・レポ・ファシリティが使われるということが起こります。ここまでの議論を前節で説明したFF市場における需要曲線と供給曲線を用いて整理しましょう*23。まず図表7を見てほしいのですが、FRBはIORB(IOER)を設定することでFFレートに下限を付すことを試みますが、需給を一致させるFFレートがIORB(IOER)を下回ることが常態化します(図表7において「市場で決まるFFレート」が「IORB」を下回っている点に注意してください)。ここではFF市場における供給サイドはFRBに設定されるわけでなく、GSEなどの運用行動(つまり金利が高ければFF市場での資金供給を増やす)により決まると表現しています(供給曲線は右肩上がりになっています)。そこでFRBは下限を付すためにリバース・レポ・ファシリティを導入し、金利に下限を付します。図表8においてON RRPがリバース・レポ・ファシリティでFRBがオファーする水準(前述の例では0.8%)になります。ここではリバース・レポ・ファシリティのオファー・レート以下では運用する主体がいないため、そこからは水平になります。

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