ファイナンス 2022年5月号 No.678
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0 図表5  FFレート、IORB(IOER)、ON RRP(リバース・レポ・レート)とターゲット・レンジの推移*17) Afonso et al.(2022)では“Through the ON RRP facility, eligible institutions̶money market funds, government-sponsored enterprises, primary dealers, and banks̶can invest overnight with the Fed through a repurchase agreement(repo).”としています。*18) ちなみに、リバース・レポ・ファシリティは事実上、MMFの元本割れを防いでいるという指摘もあります。例えば、「米短期市場、金余りで変調、*19) 例えば2015年12月に政策金利を引き上げていますが、これに伴い、リバース・レポ・レートも0.05%から0.25%へ引き上げられています。*20) これまでこのオファー・レートをリバース・レポ・レートと記載していました。ここでは実際のオペレーションに沿ってオファー・レートと記載しています。*21) ここではオーバーナイトで貸し出しをするオーバーナイト・カウンター・パーティ・レポ・ファシリティを前提に説明しましたが、1営業日以上で貸*22) 制度的にはオファーの上限に達した場合、案分する形がとられています。制度の詳細はニューヨーク連銀のサイトを参照してください。 MMF、運用利回りマイナス目前、企業の資金調達に支障も」(2021/06/19 日本経済新聞)などを参照してください。2022年3月の利上げでは0.05%から0.3%へ、2022年5月の利上げでは0.3%から0.8%へ引き上げられています。し出しをするターム物のリバース・レポ・ファシリティも存在しています。詳細はニューヨーク連銀のサイトを参照してください。 https://www.newyorkfed.org/markets/rrp_faqhttps://www.newyorkfed.org/markets/rrp_faq(出所)Afonso et al. (2022)より抜粋Basis points302010-10Sep13Sep15Sep17IORB(IOER)FFレートON RRPターゲット・レンジSep21(注)ON RRPはリバース・レポ・ファシリティのオファー・レートになります。ここでは利上げを調整し、ターゲットレンジにFFレートがどの程度収まっているかを示しています。Sep19 14 ファイナンス 2022 May.レポ・ファシリティはニューヨーク連銀が実施する点は後述します)。前述のように、そもそもFFレートがIOER(IORB)以下で推移した理由は、GSEなど付利の対象にならない主体がいたからです。預金との類似性で説明すれば、MMFやGSE、プライマリー・ディーラー、商業銀行*17など幅広い主体が一定の金利(リバース・レポ・レート)で余剰資金をFRBに預けられるようにすることで、FFレートにフロアを付すという仕組みがリバース・レポ・ファシリティの直観的なイメージです。読者がGSEの運用担当者である場合、短期運用をするうえで、FF市場において無担保で貸し出すだけでなく、リバース・レポ・ファシリティが導入されて以降、FRBに預ける選択肢も生まれます。読者としては準備預金を積み上げても付利は得られないのでFF市場で運用を行っていたのですが、リバース・レポ・ファシリティが導入されたことでFRBに預けることで一定の金利が得られることになります。そのため、読者としてはFF市場において、それ以下の金利で運用するメリットがありませんから、リバース・レポ・ファシリティの金利が決まれば、おのずとその裁定から、FFレートに下限(フロア)が付されることになります*18。現在、FRBによる利上げについて議論されていますが、FFレートの下限(フロア)という意味合いを考えると、利上げ(利下げ)に際してリバース・レポ・レートも引き上げる(下げる)必要があると解釈できます*19。リバース・レポ・ファシリティの実際リバース・レポ・ファシリティでは、ニューヨーク連銀のデスクが毎営業日、米国債を担保として、(MMFなどの)カウンター・パーティに対し、一定の金利でオファーをします(デスクについてはBOX 1を参照してください)。オファー・レート*20は2022年5月時点で0.80%に設定されています(これらの値はその時々の政策に依存するため変わりえる点に注意してください)。オペレーションのイメージは、例えばニューヨーク連銀のデスクが0.8%でオファーした場合、(MMFなどの)カウンター・パーティはそれぞれ自らが貸し出したい額を提示します*21。個別行については応札額に一定の上限が設定されていますが、基本的には応札総額と落札総額は一致しており、固定金利で無制限にMMFなどから借り入れるオペレーションと解釈できます*22。図表5はニューヨーク連銀のレポート(Afonso et al. 2022)を抜粋したものですが、FFレートとIORB(IOER)、リバース・レポ・レート(ON RRP)を示しています。この図ではターゲット・レンジにFFレートが入っていることが視覚的にわかるように利上げに伴う金利変化の調整をしているのですが、これをみるとFFレートは基本的にリバース・レポ・レートを上回る形で推移していることが確認できます。もっとも、FFレートは、2019年にIORB(IOER)やターゲット・レンジを上回っていることもわかります。2019年秋にはレポの急騰があったのですが、レポの急騰については今後の論文で説明することを予定しています(FFレートのフロアについては次節で説明します)。

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