ファイナンス 2022年5月号 No.678
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3.2 リバース・レポ・ファシリティFFレートにフロアが生まれるメカニズム020081 ファイナンス 2022 May. 13フェデラル・ファンド(FF)市場およびFFレート(FF金利)入門1.41.20.80.60.40.220092010*13) McGowan and Nosal(2020)によればFF市場の借り手は主にIOERアービトラージ(FF市場で借り入れて、IOERに預けて利益を得る取引)によるものとしています。相対的に制度的に負担が少ない外国の金融機関が主にその取引を行っているとしています。*14) 外国銀行などがアービトラージなどの観点でFHLBから資金融通を受ける構図が生まれました。このことも、FFレートではなく、SOFRをLIBORの代替金利として利用する理由になりました。詳細は筆者が記載したSOFR入門を参照してください。*15) 正式には「Fixed-rate full-allotment overnight reverse repurchase(ON RRP)facility(固定金利・金額無制限の翌日物リバース・レポ・ファシリティ)」といいます。*16) クリアリング・バンクやトライパーティ・レポについては筆者が記載した「SOFR入門」を参照してください。図表3 FFレートとIOER(付利金利)の推移(%)1.6図表4 リバース・レポ・ファシリティのイメージIOER(付利金利)20112012FFレート2013FRBへ1営業日貸し出す国債を担保として受け取る(例:MMF、超過準備預金に金利を支払うことができれば、銀行にとってそれより低い金利で貸し出すくらいなら準備預金を積み上げたほうがいいわけですから、IOERがFFレートの下限になると考えられました。もっとも、FF市場は複雑であり、その後、FFレートはIOERを下回る金利で推移することになります。図表3は2008年から2013年のFFレートおよびIOERを示しています。これをみるとFFレートがIOERを下回るように推移していることがわかります。このようなことが起きたメカニズムは次のようなものです。まず、FRBに準備預金を有している金融機関にとって、超過準備預金に金利が付くのであれば、無担保コール市場であるFF市場において付利以下の金利で運用するインセンティブはありません。もっとも、連邦住宅貸付銀行(Federal Home Loan Bank, FHLB)などGSEは制度上、付利の対象外であることから、その余剰資金の一部をFF市場で運用する必要があり、IOER以下で運用するインセンティブを有していました。そのような中、外国銀行がIOERとの裁定取引(FF市場で資金を調達してIOERで運用する)という観点で資金の取り手となることで*13、FFレートがIOER以下で推移するということが発生したわけです*14。上述のように、付利は当初、FFレートに下限を付すために導入されましたが、FFレートはIOER以下の水準で推移することになります。そこでFRBは、FFレートに下限(フロア)を設けるため、2013年にリバース・レポ・ファシリティ*15を導入しました。図表4がリバース・レポ・ファシリティのイメージです。GSEやMMFなどの短期資金で運用する主体がオーバーナイトで短期資金をFRBに貸し出しますが、その際に担保として米国債をFRBから受け取ります。筆者が記載した「SOFR入門」で詳細に議論しましたが、このような担保付の資金融通をレポ取引といいます。「リバース・レポ」といわれると複雑に感じられるかもしれませんが、「SOFR入門」で説明したとおり、リバース・レポは担保付きの短期運用です。通常のリバース・レポの場合、例えば、クリアリング・バンク*16を経由してMMFが投資銀行などへ貸し出すわけですが、リバース・レポ・ファシリティの場合は、MMFが貸し出す相手がFRBになります(リバース・FRB国債短期資金の運用者GSE等)国債

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