ファイナンス 2022年4月号 No.677
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いとずっと笑われてきました。日本で電気自動車を使う場合、走行時にCO2は排出されませんが、電気を作るときにはCO2が排出されるのでCO2問題の解決策になりません。世界のCO2排出量は約350億トンのうち、日本のCO2排出量は約11億トンで世界で5番目に多く排出しています。日本は森林が非常に広いので光合成で毎年2億トンのCO2を吸収してくれますが、同じ量が交通セクターから出てしまいます。さらに、最もCO2が排出されるのはエネルギー変換部門で、発電の工程で4億トンものCO2が排出されますので、日本においてCO2削減に本気で取り組むためには、バイオ燃料が必要です。あまり知られていませんが、日本の最高のハイブリッド車のCO2排出量は、石炭で作られる電気を使用する電気自動車よりも燃費がよくてCO2が少ないのです。いま日本では乗用車が6千万台走っていますが、将来、6千万台のうち半分の3千万台が電気自動車化したとします。電気代が安い深夜零時から6kWで1時間、3千万台が同時に充電した場合に必要な電力量は1億8千万kWhです。日本の夏の最も暑い日に旧型の石炭火力発電まで含めて根こそぎ動かして1時間に発電している総量が1億8千万kWhですから、どこにもそんな余剰電力はありません。(2)バイオ燃料の特長バッテリーがよくなる、安くなる、という人がいますが、そんなことはありません。バッテリーはプラスとマイナスの電位差で発電する二次電池で、どんなに改良しても1キロ当たりのエネルギー量は100Whしか充電できません。物理的に限界が決まっています。一方で、私たちが作っているバイオ燃料(原料には使用済み食用油とユーグレナ由来の油を使用)は同じ1キロ当たりのエネルギー量は12,000Whもあります。これまでバイオ燃料は質が悪く、たくさんの量を入れると車が故障したり、排ガスが規制値を超えてしまう、というイメージがありましたし、国の規定で一般的なバイオディーゼル燃料は上限5%までしか混ぜられません。しかしユーグレナ社が作ったバイオ燃料は、今までのものと全く質が違います。私たちが作ったバイオディーゼル燃料「サステオ」は市販の軽油と同じ品質なのです。ユーグレナは油田と違って生産量を増やすことができます。そして今まで最大のネックだったバイオディーゼル燃料の混合上限5%という制限を超えて100%まで使えるようになることを実現しようと、10年前から研究開発に取り組み、やっとディーゼル用とジェット用のバイオ燃料を出荷できるようになりました。1リットルの石油を燃やすと、2.6キロのCO2が出てきますが、国産のバイオ燃料ではこの2.6キロを光合成で吸収してくれるので、CO2の排出量はプラスマイナスゼロという考え方ができます。運ぶ段階でCO2が出ますが、ここも再生可能エネルギーで充電したバッテリーを使ったり、グリーンな水素を使えばCO2排出量は限りなくゼロになります。(3)バイオ燃料を飛行機と自動車に私は「国産のバイオ燃料を作って飛行機を飛ばします」と言い続けて、2021年にようやくバイオ燃料で飛行機が飛びました。モータースポーツの「スーパー耐久レースin岡山」にも参加し、マツダのレース用の車が化石燃料を一滴も使わずに完走しました。私たちが製造するバイオディーゼル燃料「サステオ」は、揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)上も問題なく、JIS規格上も軽油と全く同じ品質であること、よって軽油と混合せずバイオ燃料100%で走行しても問題ないことを説明し、マツダに使ってもらいました。これまでCO2を排出しない取り組みでスーパー耐久レースに参加する車はトヨタの水素エンジン車しかありませんでしたが、今回、マツダがエンジン等の改造も一切なく、バイオ燃料でカーレースができることを証明しました。全国にある国立大学を中核として、地元企業と大企業と地域金融機関を結びつけるのです。地域金融機関4.大学発ベンチャーが日本再成長のエンジンに日本のスタートアップ、特に大学発ベンチャーには、まだまだ山ほど夢とイノベーションが埋もれています。ですから、ここに注目してリソースを投入すれば、日本はあっという間に元気になります。

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