ファイナンス 2022年4月号 No.677
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2.奇跡を起こすための3つの取り組み1.最高未来責任者(CFO)2.徹底的に1番にこだわる(1)1番以外は存在していないのと同じですから、今までとやり方を変える必要があります、それを今こそやらなければいけません。これだけ変化の激しい時代は私たちが初めて経験するものです。5千万人が利用するまでにどれくらいの時間が必要だったのか、という調査があります。ライト兄弟が飛行機を発明してから5千万人が飛行機を利用するまで68年、ドイツのフェルディナント・ブラウンがブラウン管を発明してから5千万人がテレビを見るようになるまで22年、ジャック・ドーシーがTwitterを発明して5千万人がツイートするまで2年、任天堂がポケモンGOを出して5千万人が遊ぶようになるまで19日です。(3)デジタルとグリーンが日本を変える私たちはインパクトフルな新しい発明で世界が一変してしまう社会を生きていますが、今、ポケモンGOよりもインパクトフルなイベントを体験しています。それはコロナショックです。世界中の人が、あっという間に生活が変わってしまいました。それなのに日本は全然変わっていません。最も変わっていないのはデジタルとグリーンです。デジタル化の度合いにおいて日本はバングラデシュの難民キャンプ以下です。コロナ禍で10万円を国民に給付するための経費が1,500億円かかっていますが、私たちはWFP(国連世界食糧計画)とともに、毎日バングラデシュの難民キャンプで100万人に食料をコストゼロで届けています。難民が全員マイナンバーカードにあたるものと、国連から配布される電子マネーを持っているからです。バングラデシュの難民キャンプの方が日本よりもデジタル化が進んでいます。今、デジタルとグリーンの分野で日本が変わらなかったら、日本が再び活力ある国になるのが不可能なことは明らかです。今ここで絶対に変わらないといけません。私自身も自分が社長を務める会社が変わらなければいけないと考えて、3つのことに取り組んでいます。一つ目は、自分たちと一番遠い人の意見を会社の中に取り入れようとしています。私たちの会社にはCFOがいます。Chief Financial Officer(最高財務責任者)ではなく、Chief Future Officer、すなわち「最高未来責任者」です。未来の当事者の声を会社に直接取り入れようと、18歳以下の最高未来責任者を全国から公募し、SDGsの17のゴールの中で最も挑戦したい課題はどれで、ユーグレナ社としてこの課題にどのように取り組むのか、という論文を書いてもらいました。小学生から高校3年生まで世界中から500人の応募があった中からこれまでに2人の中高校生をCFOに選びました。未来に生き残る会社、変化し続ける社会に対応できる会社になるために、取締役会、役員会、株主総会など会社に最も縁遠い人の意見を取り入れる仕組みを導入しています。価値あるイノベーションと多様なアイディアを生み出すことができる組織の条件はすでに明らかになっていて、MIT(マサチューセッツ工科大学)アレックス・ペントランド教授が「そのための条件は3つしかない」と言っています。一つ目は「talk a lot」、たくさん話さないと良いアイディアは出てこないということ、二つ目は「talk equally」、どんな立場の人にも平等に発言の機会がないと良いアイディアは出てこないということ、三つ目が最も難しいことですが、「talk outside」、同じカンパニーや同じ業界、同じ分野の人と会っていても価値あるアイディアやイノベーションは出てこないということです。普段会えない人と強引に会う仕組みを内在化することができるかどうかです。この3つの条件がイノべーション、価値あるアイディアづくりのための組織設計の肝だ、ということが明らかになっているわけですから、生産性を高めて価値あるアイディアづくりができる組織になるために「最高未来責任者」を取り入れています。CFOや、CFOとともに活動しているFutureサミットメンバーの彼ら彼女らと「イノベーションを起こすために、必要なものは何か」について2年間ディスカッションしてきて分かったことが一つあります。それは「徹底的に1番にこだわる」です。これが私たちの取り組んでいることの二つ目です。文化、アート、スポーツ、研究、ビジネス等どんな分野でも競争している限り1番でないと駄目なのです。

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