ファイナンス 2022年4月号 No.677
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職員トップセミナー 4.ベンチャー発のイノベーションを生かせ5.ミレニアル・Z世代(1)ミレニアル、Z世代とはに毎日約1万人の子どもたちにユーグレナ入りクッキーを配布する活動を続けています。私が立ち上げた会社は東京大学農学部発のベンチャー企業の一つです。2021年時点で大学発ベンチャー企業は2,905社で、もうすぐ3,000社です。その中で60社以上が上場していますが、その多くが東証マザーズ、新興市場での上場です。私たちの会社は2014年12月3日に東証一部に上場しました。10年前に3人でなけなしの貯金をはたいて1,000万円でつくった会社がたった10年で東証一部に上場し、時価総額が一時1,000億円にもなりました。しかし、私が説明に行った500社は、ユーグレナなんて見たことも聞いたこともないから駄目だ、リスクがあるから無理だ、と言いました。これが日本のスタートアップ、ベンチャー企業にとって最大の急所、ボトルネックです。もし、皆さんのところに情熱を持った大学の先生や若者が来た時に何と答えるでしょうか。「そんなこと知らないから、無理だよ、駄目だよ、やめなさい」ではイノベーションは絶対に起きません。「知らないけれど、おもしろそうだ。チャンスかもしれない。どうしたら世の中で受け入れられて皆の役に立つものになるのか」という視点に立って、先輩としての経験と見識を日本の大学と若者に投資するかどうかにかかっています。日本はベンチャー企業に冷たい国です。スイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)でも、世界経済フォーラムダボス会議でも、日本はベンチャーを応援することについて最下位に位置付けられています。コロナ禍で世界中がベンチャー企業を応援しています。米国では、新型コロナウイルス感染症が拡大する前のベンチャーに対するリスクマネーは15兆円でしたが、コロナ後には17兆円に増えました。中国のリスクマネーもコロナ前が2.5兆円でしたが、3兆円に増えました。インドもフランスもイギリスも、世界中でベンチャーに対するリスクマネーが増えましたが、日本は減っています。新型コロナウイルス感染症拡大の前の日本のベンチャー企業に対するリスクマネーは2,500億円で、ただでさえ少ないのにコロナ後には1,500億円にまで減少しました。エンジェル投資家(起業後間もない企業に出資する投資家)の投資金額について言えば、アメリカでは成功した起業家が後輩のために毎年2.5兆円投資しますが、日本ではたった80億円です。2015年に日本ベンチャー大賞を受賞して以来、私はずっとこんなにベンチャーに冷たい国はない、日本はこれを変えなければといけない、と訴えています。ミレニアル世代は2000年に20歳になった人たち、1980年以降生まれの人たちで、Z世代は1990年代後半から2000年代に生まれた人のことを指します。私がちょうど1985年生まれなので、ミレニアル世代の先頭バッターです。私の父親が1949年生まれ、団塊の世代の最後で同期生は270万人いますが、私と同じ1980年生まれが150万人、2021年に日本で生まれてくる赤ちゃんはおそらく80万人を切ります。人口構成では団塊の世代が4、ミレニアル世代が2、これから100年の人生を迎える赤ちゃんが1で、ミレニアル世代とZ世代は人口も資本の蓄積も全くないため社会を変えるインパクトを持っていません。(2)ミレニアル、Z世代が社会の中心にしかし、4年後にはミレニアル世代、Z世代が社会の中心、主役になります。2025年に生産年齢人口15歳から64歳までの二人に一人がミレニアル世代とZ世代になり、選挙やサービスの供給者、消費者、生活者としても二人に一人以上がミレニアル世代とZ世代が中心になります。1989年、日本はスイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)の世界競争力ランキングで1位、ダボス会議の競争力フォーラムでも1位で、年末の日経平均終値は3万8,915円でした。平成の30年間が終わり、2019年では日本はIMDの競争力ランキングで30位、一人当たり生産性では27位、ジェンダーギャップ指数では120位。日本が世界一という指数は一つもありません。日本はこの30年間全く成長していないのです。

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