ファイナンス 2022年4月号 No.677
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1.私とユーグレナ1.ムハマド・ユヌス博士との出会い(1)ごく普通の中流家庭で育つ令和3年11月16日(火)開催2.栄養失調者に栄養価の高い食べ物を届けたい(1)コメしかなくて栄養失調に講師演題私は東京の多摩ニュータウンで育ちました。父親はサラリーマン、母親は専業主婦、そして私と弟の4人家族、なんの特徴もない平凡な中流家庭です。転機は大学1年生の夏休みに訪れました。私はそれまで一度も海外に行ったことがなかったので、大学1年生の夏に海外に行こうと決めていました。パスポートを作り、どこに行こうかと考えて、バングラデシュに行くことにしました。そこで人生が変わりました。(2)バングラデシュは人口大国で最貧国のひとつバングラデシュは、2つのことがよく知られています。1つ目は、九州の2倍ほどの国土に1億6千万人もの人が暮らす人口大国ということ、2つ目が最貧国のひとつだということです。バングラデシュの労働人口のうち、第一次産業である農家は40%で、そのほとんどが一日の所得が1ドル程度、年間所得が4万円に届きません。国連のSDGsの17のゴールの一番は貧困の撲滅で、国連は1日1.9ドル以下で暮らす人を極度の貧困層と定義していますが、バングラデシュの農家はこの1.9ドルにすら届いていません。(3)グラミンバンクで1か月のインターンシップ私はバングラデシュにあるグラミンバンクで1か月間インターンをしました。「グラミン」はベンガル語で「農家」という意味です。グラミンバンクは、2006年にノーベル賞を受賞したムハマド・ユヌス博士が貧しい農家のために設立した銀行で、現在ではグラミン銀行が9百万人に1兆円の融資をしています。グラミンバンクは字が読めない、名前が書けない人に、年収に等しい3万円を融資してくれます。私が手伝った支店では、融資を受けた農家はこの3万円でヤギを買い、農作業の合間にヤギの乳搾りをしてヤギのミルクを市場で販売しました。一日農作業をしても所得は100円ですが、ヤギのミルク販売をすると、売り上げが500円になります。所得が5倍になって、収入も安定しますから、一年後、融資を受けた全員が3万円を返済します。ユヌス博士は、極貧の生活を強いられている農家の人々の生活基盤づくりをずっと続けて来られました。私は大学1年生の時に、この「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」という素晴らしいソーシャルビジネスを世界で一番貧しい国で実現しているのを目の当たりにして「自分は将来、絶対こういう仕事しよう」と決めました。ムハマド・ユヌス博士との出会いは、私が起業した1つ目の理由です。私が起業した二つ目の理由についてお話します。バングラデシュは最貧国のひとつですから、食べ物がなくて困っていると思っていましたがそうではありませんでした。朝、昼、晩、食べ切れないボリュームのカレーが出てきます。日本では1年間に50キロのお米が食べられますが、バングラデシュの人は、日本出雲 充 氏(株式会社ユーグレナ 代表取締役社長)私はミドリムシで世界を救うことに決めました。職員 トップセミナー

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