ファイナンス 2022年4月号 No.677
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主計局主計官 北尾 昌也(2) こうした点や、今後人口減少等により社会資本における人口一人当たりの維持管理コストの増加が見込まれること、そして厳しい財政事情を踏まえ、インフラ整備を「量」で評価する時代は終わり、より少ない費用で最大限の効果が発揮されているかという「質」の面での評価が重要な時代になっている。(3) 「量」から「質」への転換、メリハリをつけた社会資本整備に向けた一つの傾向として、近年、激甚化する水災害や予想される巨大地震等への対応にインフラ整備の予算を重点化してきている。(4) これまでの予算編成においては、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の初年度について令和2年度第3次補正予算で機動的な対応のため1.7兆円を計上した。令和3年度予算では、公共事業関係費の総額を横ばいとしつつ、国土強靱化関連予算の増額(3.5兆円→3.8兆円)を官民連携による「流域治水」への支援の拡充によるなど安易なハード整備が軸にならぬようにするとの方向性を示している。1.基本的考え方令和4年度予算の公共事業関係予算については、「令和4年度予算の編成等に関する建議」(令和3年12月3日、財政制度等審議会・財政制度分科会)も踏まえ、主に以下のような考え方により、編成を行った。(1) 我が国においては、これまでインフラ整備を着実に進めてきた結果、バブル景気絶頂期の30年前と比較しても、高速道路、新幹線、空港、港湾、生活関連施設等の社会資本の整備水準は大きく向上しており、社会インフラは概成しつつある。(5) しかしながら、予算が適切に執行されているか、という点に関しては、翌年度への繰越額が増加傾向にある。(6) 令和2年度末における繰越額が増えたのは、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の初年度として、前年度を上回る規模の補正予算を措置したことが大きな要因と考えられる。その一方で、当初予算における公共投資予算の繰越額も増加傾向にある。臨時・特別の措置の一環として当初予算を増額させた令和元年度・2年度は繰越額も平成30年度末の2.0兆円から2.6兆円に増加している。(7) 公共事業の当初予算における事業(工期1年程度)の執行状況を見ると、約3割の事業が年度後半になって契約がなされており、約4割の事業は、年度末に繰越手続きを行った上で、翌年度にかけて執行されている。効率的・計画的な事業執行を進める観点から、翌年度にまたがる見通しが立つ事業については、国庫債務負担行為を活用すること等により、執行の平準化を図りつつ、可能な限り繰越額を減らしていくべきである。(8) もとより、執行上の工夫以前に、公共事業関係費が漫然と高水準で高止まりすることは避けねばならない。補正予算を含め、執行可能性を見極めつつ、真に必要な事業を厳選すべきである。(9) 「量」から「質」への転換の更なる進展に向けては、防災・減災対策、生産性向上対策、老朽化対策といったインフラ整備の各分野において、これまで以上にソフト対策とハード対策を一体のものとして効果を最大化させることは絶対条件である。そのためには地方公共団体・住民・民間事業令和4年度 国土交通・公共事業関係予算について

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