ファイナンス 2022年3月号 No.676
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“ヨソモノ”が活躍するニセコ町~地域おこし協力隊の活動~ニセコ町企画環境課 自治創生係長川埜 満寿夫1ニセコ町の概要ニセコ町は、北海道の南西部に位置し、国際スノーリゾートとして知名度を得ている観光業と多種多様な農畜産物の生産が特徴の農業を2大産業とする人口約5,000人の町です。2001年、全国で初めて「情報共有」と「住民参加」を町のあらゆる仕事を進める上での基本ルールとした「まちづくり基本条例」を制定し、町民一人ひとりが自ら考え、行動するまちづくりを続けています。また、観光業と農業を支える基盤は豊かな自然景観であるとの認識のもと、自然環境を基軸とした取組を進め、国から「環境モデル都市」や「SDGs未来都市」に選定されています。移住者の多いニセコ町では、1980年の国勢調査から人口が増え続けており、その要因としては20~40代の子育て世代の転入が挙げられ、子どもの数も増加傾向にあります。外国人住民も300人弱と総人口の5%を超え、多様性が町の魅力にもなっています。2地域おこし協力隊地域おこし協力隊(以下、「協力隊」という。)は、都市から地方へ生活の拠点を移し、地方で活動を行いながら地域への定住・定着を図り、地域の活性化につなげるために作られた制度です。創設された2009年度は全国で100名に満たない隊員数でしたが、現在は5,000人を超えるほどに増加しています。ニセコ町でも2011年度から協力隊制度を活用し、これまでに55人の協力隊(卒隊者も含む)を受け入れており、現役の隊員数は29人と過去最大となっています。最長3年の任期後、同じ地域に定住する割合は全国平均が約6割、ニセコ町では町内に定住する割合が7割を超えています。写真(1):自分たちで制作したロゴを掲げ集まる協力隊メンバー3ニセコ町の地域おこし協力隊ニセコ町では、町の最上位計画である第5次総合計画さらには地方創生に関する総合戦略において、まちづくりの担い手、地方創生の推進役として協力隊を位置付けています。それぞれの思いを持ち、都市部からニセコ町にやってくる“ヨソモノ”の協力隊は、新しい文化・考え・価値を地域にもたらしてくれる存在といえます。しかし、当然そこには考え方・価値観の違いがあり、摩擦が起こることもあります。協力隊は地域にしっかりと根差し周りから認めてもらう、地域もまた協力隊を受け入れ支援していく、そして相互に交流しその摩擦を乗り越えていくことで、町が活性化し、町の魅力・多様性は高まっていくものと考えています。実際に、現在活動している29人の協力隊は、年代も20~50代と幅広く、夫婦で活動している方、子育てをしている方、任期中に出産をされた方、海外活動経験のある方、外国籍の方など多様で、活動分野も農業、林業、観光、教育、スポーツ、子育て支援、交通、交流、輸出、温泉、SDGsなど様々です。まさにニセコ町88 ファイナンス 2022 Mar.連載各地の話題

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