ファイナンス 2022年3月号 No.676
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(2)2021年1月 米国議会襲撃コロナ禍突入から数か月経つと、商品の流通の問題や配達枠の問題なども減少し、インターネットでの日用品の購入も落ち着いてきました。スーパーに出かけて買い物をするのはコロナ拡大防止の観点から控える状況がまだ続いていましたが、インターネットでの日用品の購入と時折アジア系スーパーの実店舗に訪れることで、大体の買い物を済ませられるようになっていました。そうした頃の2021年1月6日に起きた米国議会襲撃事件。コロナ禍の始まり頃ほどではないものの、舞台となった首都ワシントン界隈では再び消費者の買いだめ行動が広がり、外出禁止令や道路封鎖といったこともあって物流が止まり、モノがないため・流通がふさがっているために選択肢が減り、結果として「あるものを買う」生活が再びしばらく続きました。図3 議会襲撃後、外出禁止令が発布され、州兵によって封鎖される道路(2021年1月15日、筆者撮影)(3)2021年夏頃からそしてようやくコロナ禍に入って1年が経った2021年初夏頃からは、街に人が戻ってくるとともに、実店舗での買い物を再開する人も増えてきました。実際の店舗で再び買い物をするようになると、値札が張り替えられているのを目にしたり(アメリカではわざわざ過去の札をはがすなどと言うことはせずに、単に新しい値札を古い値札の脇に置いているだけのことも多い)、色々と気づくことがありました。例えば、2021年初夏頃から私の目に留まったところでは:● 毎朝食べているシリアル、割安な値段で提供していた大袋入りのパッケージがなくなった。● セールの対象品が減った。● 同一のモノの値段が実際に着実に上がっている。(特に2022年1月に至っては、パスタが2度も順次値上がりした。$1.49→$1.59→$1.69)● 店頭に並んでいる商品(例えばアスパラガス)の価格は一緒だが、よく見るとオーガニックから通常のものに変わっていた。● ずっと$4.99で販売していたサラダパックが$5.49に値上がりしたかと思いきや販売がなくなり、しばらくすると$4.99で他のブランドのサラダパックを売り始めた。● バターやヨーグルトなど、普段買っている商品が売り切れの事が多くなっている。ロックダウン当初の、いつも買っているモノがないために高いものに手を出さざるを得なかった状況と比べて、本格的にモノの値段が上がっている、それに伴って提供されるモノが変わっている、と感じるのが今回です。足元、インフレが加速する中、新聞や雑誌などでも「物が安いうちに買いだめをできるものは買いだめを」といった記事が散見されるようになっており、そうした消費者の行動も商品不足と価格上昇を加速させているように感じます。(食品の価格推移について気づいたことまとめ)このように、過去の2年半のレシートを見返してみると、やはり2~3%のインフレがゆるやかに続いている国なので、食品・日用品の値段も基本的に時折、少しずつ上がっていっている、ということを改めて実感します。ただ、細かく見ると、一本調子で上がるだけではなく下がることもあって、また商品の価格が上がるとその分他のブランドを調達してくるなど、何とか価格を維持しようという小売店の努力のようなものも感じられる、というのは今回新たに気づいた点です。しかし、その努力もむなしく多くの商品の値が上がり、店頭から一部商品が消えて行っている、というのが2021年半ば以降の現状のように見て取れます。また、ある特定の商品がいくら値上げされるのかというのももちろん支出に影響するので気になるのですが、社会の動向が不安定になるなどして通常購入するものが手に入らず、より高価な代替品を買うしかなく ファイナンス 2022 Mar.63海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー

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