ファイナンス 2022年3月号 No.676
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第3四半期まで価格が維持されており、特に基礎的な野菜については価格を据え置こうというスーパー側の努力があったらしきことにも気づきます。普段はそれほど真剣に一つ一つの商品の値札を見てはいないのですが、それでもやはり時折値段が上がっているなと気づくことはあったので、そうした感覚ともこちらのデータは比較的整合的です。他方で、食品のCPI伸び率とこのデータを見比べると、必ずしも同じような動きをしているわけでもないことにも気づきます。例えば2020年第2四半期、食品のCPIが前期比で2.4%も上がっているにもかかわらず、いつも買っている商品の値段には変化が見られません。その頃は、コロナのロックダウンが始まり、皆が商品の買い占めに走り、またインターネットでの買い物を一斉に始めた時期でした。ご参考までに、どのようなことが起きていたのか、少しご紹介します。(1)コロナとロックダウン2020年3月、アメリカではコロナ禍が本格的に始まり、多くの企業が勤務形態を在宅勤務に切り替え、外出抑制を進めました。日常面では、まずは消毒液等が薬局・スーパーから消え、そしてパスタ、小麦粉、水、缶詰といった保存可能な食品が、更には日持ちする野菜や卵といった生鮮食品までもが手に入りづらくなっていきました。スーパーの棚には普段は買うことのない高級ブランドのものであれば残っていることもあったため、どうしても欲しければそういったものを高い値段を出して買うことになります。当時のレシートを見直すと、例えば2020年4月には、卵を1ダース5.59ドルで買ったりもしています。(通常私が購入しているものと比べると1.8倍!)また、ロックダウン後には、基本的に家から出ないように、スーパーへの買い出しも可能な限り回数を減らすようにと行政から指示され、日常の買い物はインターネットで済ませることが多くなりました。こちらでは、特にネット販売しているものはアルゴリズムで自動的に価格変動するようにしていることもあってか、値段は需給に応じてしょっちゅう動きます。上がることもあれば下がることもあり、インターネット上では適正価格というのがとても掴みづらいという印象があります。そうした中で、2020年3月中旬頃から一気に皆がありとあらゆるものをインターネットで買うようになったからか、小麦粉やイーストなどは通常価格では品切れ、通常の2倍、3倍は当たり前、業者によっては私が見たものでも7~8倍もの価格を付けていました。さらに、買った物を各戸に配達してくれる配達員が社会全体として足りていないために、ネット上で商品はあっても、ネットスーパーの配達枠の空きがない、という状況に陥っていました。この時期は、配達枠をなんとか確保するために、深夜・早朝問わず何度もウェブにアクセスして枠の確保に努めるのが常でした。そうした中では、配達枠をようやく確保できたタイミングで買えるものを多少割高だったとしても買う(そうしないと次にいつ買えるか分からず、手に入らないよりはよほど良い)、という選択をするしかない状況でした。そのため、2020年第2四半期の通常購入している商品の値段には変化が見られませんが、それらが往々にして手に入らないため実際の支出は増えるのが常でした。図2 米国で本格的にコロナ禍が始まった頃の近隣スーパーの様子。写真左上から時計回りにそれぞれ、卵、トイレットペーパー、じゃがいも・かぼちゃ等の生鮮野菜、パスタを売っている棚(2020年3月14日、筆者撮影)62 ファイナンス 2022 Mar.連載海外 ウォッチャー

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