ファイナンス 2022年3月号 No.676
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4 食品の値動きでは、このような対応のない日常買うもの、典型的には食品などはどうなのでしょうか。(価格の振り返り方法)食品の価格の動きについては、もちろん政府が出しているCPIデータ等もあるのですが、日々の買い物についてやれ前年比で生鮮食品の価格が○%上がった等と言われてもちょっとピンとこない気がします。何か良いものがないかと思って考えてみると、ふと、いつも買い物の後にレシートを読み込んでいるアプリが使えることに気づきました。アメリカでは、昔から買い物にはクーポンを使ったりメンバーカードを作ったりするのが一般的でしたが、最近では、日常の買い物をした後にレシートを専用アプリで読み込むと、レシートの写真を保存するだけでなく、OCR(optical character recognition;光学文字認識)で商品、値段、店舗、日時等が解析・データ化され、割引対象となる商品を購入しているとポイントがもらえるアプリがあります。それを私も渡米後間もなくから使っていたのでした。(個人的には、ポイントがもらえること以上に、スマホでスキャンすればすぐにレシートを捨てられるようになって、古いレシートで膨らみがちな財布がすっきりするようになったのが嬉しい副次効果で、継続的に活用するモチベーションになりました。)このアプリの過去のデータとインターネットでの購入履歴を見てみると、2019年夏頃から同じスーパーで日頃、継続的に購入していた商品(同一ブランド、同一サイズ)の値段を振り返ることができたので、ご参考までに下に記録します(表3参照)。なお、表3で空欄になっているのは、同一商品の購入記録がなかった時期です。これには、単に私が(必要なくて)購入していない場合のほかに、欠品により同じ商品が手に入らず、継続的な値段が取れなくなっている場合があります。また、2019年第4四半期で空欄が多いのは、私のアプリ利用が定着しておらず記録に欠けているためです。ご容赦頂ければ幸いです。(2年半の間の物価変動)表3で濃い網掛けにしたのが値段が上がっていることが手元のレシートで確認できる時期で、これを見ると、特にインフレが加速していると言われている2021年後半からは、実際に多くの商品の価格の上昇があったことが分かります。ただ、この時期に限らず、その前から値段は時折上がっていたことも分かります。一方で、2020年に一度値上げした牛乳は2021年末になって値下げしていますし、トマトの値段はずっと変わっていません。ほかにもじゃがいもも2021年【表3】 筆者が日頃購入している食品の単価の価格推移。同一ブランド・同一品の推移であり、前期に比べて値上げが確認できるタイミングに濃い網掛けをしている。これを見ると2021年下旬から幅広い商品の価格が上がっているのが見て取れる。筆者の買い物記録特に断りのない限り、単位は米ドル。2019202020212022初回購入時 からの上昇率Q3Q4Q1Q2Q3Q4Q1Q2Q3Q41月(参考)食品のCPI伸び率 (都市部住民の食品支出、前期比伸び率)0.2%0.5%0.8%2.4%0.3%0.4%0.6%1.1%1.9%2.3%-11% (2021年12月まで)卵(Lサイズ、1ダース)2.992.992.992.992.993.293.293.293.393.3913.4%牛乳(有機、64 oz)3.493.493.493.493.493.993.993.993.993.793.798.6%バター(1lb)3.493.493.493.493.9914.3%バター(有機、1lb)5.295.295.995.996.1917.0%玉ねぎ(有機、1lb当たり)1.491.491.691.691.691.691.6913.4%玉ねぎ(1lb当たり)0.790.990.9925.3%じゃがいも(1lb当たり)0.990.990.990.990.990.990.991.291.2930.3%じゃがいも(有機、1lb当たり)1.491.491.491.491.491.491.6913.4%トマト(有機、1lb当たり)2.992.992.992.992.992.992.990.0%トマト缶(28oz 1缶)1.291.391.391.291.291.6931.0%トマト缶(有機、28oz 1缶)1.691.992.292.4947.3%スパゲッティ(1lb入り)1.391.391.391.391.391.391.491.6921.6%サラダ用ほうれん草1パック4.994.994.994.994.994.994.995.4910.0%(出典)食品のCPIは、Bureau of Labor StatisticsよりCPI-Uの月次Foodデータ(都市部、季節調整済)より筆者算出 、各食品の値段については、筆者の2019年8月から2022年1月までの手元のレシートデータより。2022年1月分については、店頭で値段を確認したものも含む。(注)同一四半期中に複数回同一商品を購入している場合で、その期間内に値上げ(下げ)があった場合、値上げ(下げ)後の価格を入力している。 ファイナンス 2022 Mar.61海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー

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