ファイナンス 2022年3月号 No.676
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本文中の意見、感想等についてはすべて筆者の個人的意見であり、誤りがある場合も執筆者個人に責任があります。 1 はじめに2019年の夏に米国ワシントンの国際機関に赴任して2年半が経ちました。この間、ワシントンではCOVID-19に伴うロックダウン、一斉在宅勤務、大統領選挙、昨年1月6日の議会襲撃とその後の戒厳令発布など、様々な出来事がありました。今回、海外ウォッチャー執筆のお話をいただいて何を書こうかと考えた際に、こうした世の中の動きとも時に連動する身近なモノの物価上昇について書いてみたいと思いました。米国では最近、2021年12月10日に公表された11月のCPI(総合・都市部)が前年同月比で6.8%、1月12日に公表された12月分が7.0%と、いずれも1982年以来の高さであることなどから政策担当者も警戒感を示すなど、何かと話題となっています。ただ、アメリカではこれまでもずっと2~3%のインフレが続いています。今、足元で進んでいるインフレというのは、水準以外に何か従来のインフレと異なるところがあるのでしょうか?また、そもそも2~3%のインフレがずっと続く社会というのはどんな感じなのでしょうか?本稿では、長年低インフレに見舞われている日本から米国にやってきて、現地で生活して気づくこちらの物価の動きについて、足元の7%にもなる物価上昇、この2~3年の動き、そしてもっと長期で見たときに感じることなどを、首都圏に住む一外国人消費者の視点でしかありませんが、徒然にお届けしたいと思います。【表1】日米CPIの推移を見ると、日本で0%近傍のインフレが続いていた間アメリカでは2~3%の物価上昇があり、足元ではさらに急激にインフレが進んでいることが分かる。(年)-3-2-108765432120012006201120162021(出典)OECD米国日本(%)日米CPIの推移(2001年~2021年) 2 久しぶりの米国生活で感じるモノの割高感米国で生活するのは、2006年までの留学以来です。2019年に渡米した頃の米国の景気は明らかに良く、ワシントンのすぐ横にあるバージニア州にAmazonの東海岸本部ができるということで沸き立っていました。首都ワシントンでも開発が進み、高級ブランドの入るショッピング区画ができたり、高層マンションが順次建設されたりしていました。このような中で、久しぶりの米国生活で気になったのは、モノが高い、特に外食コストが高いということ海外ウォッチャー米州開発銀行 城田 郁子FOREIGNWATCHERモノの値段が上がる社会~一消費者の目に映るアメリカのインフレ~58 ファイナンス 2022 Mar.連載海外 ウォッチャー

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