ファイナンス 2022年3月号 No.676
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年にジャスコ大垣店が開店。90年代の自家用車の普及で郊外優位が進み、郭町、駅前関係なく中心市街地そのものの低迷期に入る。大垣市によれば休日通行量は平成6年(1994)の23,417人から平成13年(2001)年には14,422人になった。その後郊外型ショッピングモールは一段と大型化する。平成19年(2007)にアクアウォーク大垣とイオンモール大垣が開店。2店合わせると店舗面積は約6万m2となり、平成16年(2004)時点で5万m2弱だった中心市街地の店舗面積を上回る規模だった。あおりで平成18年(2006)にグランドタマコシ大垣店が閉店。中心市街地の休日通行量はさらに減り平成21年(2009)に9,400人となった。店舗を縮小するなどして再起を模索してきたヤナゲン百貨店だったが、新型コロナ禍もあって令和元年に閉店。同じ年、最高路線価地点はさらに駅に近づき駅前のロータリーとなった。かつての舟運拠点は水都のシンボルに大垣共立銀行の本店が郭町に移って約100年。創業地の俵町、そして舟運で栄えた船町界隈は今どうなっているか。図3は観光スポットのひとつ「四季の広場」の写真だが、古い地図と比べると、水辺の対岸左手に旧本店があったと推測される。右手の建物は市の総合福祉会館で、昭和半ばまで卸売市場があった。眼下の水辺は水門川で、総合福祉会館の角を右に曲がった先に船町港の跡がある。流路に沿って一帯は公園化され、GWには水門川に「たらい舟」が就航する。大垣市は、週刊少年マガジン(講談社)で連載された大今良時「聲こえの形」の舞台でもある。作品は平成28年(2016)に映画化され話題を集めた。作者いわく「人と人が互いに気持ちを伝えることの難しさ」がテーマで、主人公の石田将也と聴覚障害を持つ西宮硝子を軸に、高校3年生のせつなくぎこちないやりとりが描かれている。実は写真は映画「聲の形」のメインビジュアルの場所である。総合福祉会館は硝子が所属する手話教室の会場で、将也と硝子が5年ぶりに再会を果たす。手前の橋を美み登ど鯉り橋といい本作で繰り返し登場するシンボル的な場所である。ファンが作品の名場面を訪ねる「聖地巡礼」が今も絶えない。登場人物はシネコンで映画を見たり、フードコートで食事をしたりする。ここに出てくる場所がアクアウォークやイオンタウンだ(正確にはそれぞれの施設をモデルとした架空の場所。以下同じ)。硝子は駅前のマンションに住み、郭町商店街で贈り物を買い、新大橋で将也を呼びとめ告白する。他にも実在の場所が多々登場し、聖地巡礼スポットになっている。将也が大けがをして搬送された大垣市民病院、自主製作映画の審査会場となった文化会館。大垣駅、大垣公園の遊具や石垣もファンには知られたスポットだ。美しく描かれた街なかの風景(摂津紡績跡)アクアウォーク図1の範囲イオンモール市民病院(帝国繊維跡)ジャスコ→イオンタウン文化会館図3 四季の広場と美登鯉橋(平成29年11月22日筆者撮影)図2 広域図(出所)地理院地図vectorに筆者が加筆して作成56 ファイナンス 2022 Mar.連載路線価でひもとく街の歴史

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