ファイナンス 2022年3月号 No.676
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長を続けた中国への依存度を高めてきた一方で、中国は輸出入先の分散化に比較的成功している。しかし、豪中貿易を品目別にみると、豪州が中国に一方的に依存している訳ではないことがわかる。2019年の豪州の対中輸出品目の内訳*10(図5)をみると、輸出の過半を鉄鉱石や石炭等の鉱物資源が占めており、約20年前(図6)と比較してその割合が大きく増加している。特に、鉄鉱石については、2019年には鉄鉱石だけで全体の53.2%を占めている。次に、豪州の対中輸出の過半数を占める鉄鉱石について、中国の主要輸入先国の推移(図7)を見ると、足元、中国が鉄鉱石輸入の約6割を豪州に依存していることが分かる。また、石炭(図8)についても豪州の占める割合は足元で約5割と大きい。このことから、中国も豪州からの資源輸入に大きく依存していると言える。(2)サービス輸出豪州は財の輸出入だけでなく、サービス輸出においても中国に大きく依存している。新型コロナウイルス*10) 「鉱物性生産品」は、「塩、硫黄、土石類、プラスター、石灰及びセメント」(第25類)、「鉱石、スラグ及び灰」(第26類)、「鉱物性燃料及び鉱物油並びにこれらの蒸留物、歴青物質並びに鉱物性ろう」(第27類)を含む。なお、「Commodities not specied according to kind(99)」はその他に含む。*11) 「旅行」サービスのうち、「個人(教育関連)」は留学等(学費、生活費等)、個人(その他)は、一般観光、治療・療養のための滞在等を含む。*12) 中国による豪州に対する貿易制裁は、大麦、ワイン、石炭の他にも、牛肉やロブスター、丸太等多岐に及んだ。感染拡大前の2019年12月時点の豪州のサービス輸出品目の内訳(図9*11)をみると、旅行サービス分野が6割以上を占めており、そのうち、教育関連サービス、すなわち留学が半数以上を占める。また、豪州の旅行サービス輸出先国の推移を見ると、2013年以降、特に留学サービスの伸長により、中国が突出してその額を伸ばしている(図10)。以上より、豪州は財輸出入・サービス輸出の両面において、過去十年で大きく中国への依存度を強めたといえる。(3)2020年以降の豪中対立による貿易制裁の影響先述のとおり、2020年以降、豪中関係は決定的に悪化し、中国は豪州に対して貿易制裁*12を発動した。以下では、当該貿易制裁が豪州経済に与えた影響について検証する。ここでは、貿易制裁の対象となった品目のうち、特にWTOに豪州が提訴するまでに至った大麦とワイン、豪州が中国の輸入先の約5割を占める石炭について注目する。(図5)豪州の対中輸出品目の内訳(2019年)肉及び食用のくず肉(牛肉等)天然又は養殖の真珠、貴石、半貴石、貴金属及び貴金属を張つた金属並びにこれらの製品、身辺用模造細貨類並びに貨幣羊毛、繊獣毛、粗獣毛及び馬毛の糸並びにこれらの織物木材及びその製品並びに木炭銅及びその製品鉄鉱石53.2石炭9.2その他22.4鉱物性生産品68.4その他6(出典)UN Comtrade Database飲料、アルコール及び食酢0.811.11.622.7(図6)豪州の対中輸出品目の内訳(2001年)鉄鉱石18.1石炭0.9その他12.1羊毛、繊獣毛、粗獣毛及び馬毛の糸並びにこれらの織物  16.9穀物(大麦等)4.9アルミニウム及びその製品 3.5鉄鋼 3原皮(毛皮を除く)及び革 2.7その他37.9鉱物性生産品31.1(出典)UN Comtrade Database(図7)中国の鉄鉱石主要輸入先国の推移080070050060040030020010020012002200320042005200620072008200920102011201220132014201520162017201820192020(億米ドル)(年)(出典)UN Comtrade Database豪州ブラジル南アフリカインド59.6%(2020年)(図8)中国の石炭主要輸入先国の推移01201008060402020012002200320042005200620072008200920102011201220132014201520162017201820192020(億米ドル)(年)(出典)UN Comtrade Database豪州インドネシアロシアモンゴル48.2%(2020年) ファイナンス 2022 Mar.43豪州と中国の二国間関係SPOT

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