ファイナンス 2022年3月号 No.676
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9.まとめ1972年の国交樹立以降の豪中の政治関係を巨視的に振り返れば、2014年の包括的・戦略的パートナーシップ締結や、2015年の豪中FTA成立を経てピークに達した後、中国による豪州への直接投資や内政干渉への警戒感が高まり、2020年に新型コロナウイルスの発生源を巡る議論で決定的に悪化したことがわかる。なお、これまでの保守連合及び労働党政権の対中姿勢をみると、中国の人権問題や安全保障上の懸念、あるいは米国のスタンス等、その時々の情勢に影響を受けているものの、二大政党間で大きな、そして一貫した相違は見受けられない。3豪中の経済関係前章では、歴代の豪州政権の対中政策を振り返ることで政治的側面から豪中関係について確認した。歴代首相による中国との経済関係強化は、豪州に約30年にわたる経済成長に大きく貢献した。本章では、前章で言及した密接に結びつく豪中の経済関係について、財・サービスの貿易と対内投資の両面から概観する。*9) グラフにおける「台湾」は、UN COMTRADE Database上の「その他のアジア(Other Asia, nes)」の数値を指す。 (https://unstats.un.org/unsd/tradekb/Knowledgebase/Taiwan-Province-of-China-Trade-data)1.貿易 ―依存しあう豪中(1)財の輸出入豪州の主要輸出先国の推移(図1)を見ると、2001年には第1位が日本、そして米国、韓国と続き、中国は4位であった。しかし、この状況は、この20年で大きく変化する。日米韓の割合がほぼ横ばいで推移した一方、中国は特にリーマンショック後の2009年以降大きく伸長し、日本を追い抜き第1位の輸出先国となった。その後も対中輸出は増加し、足元で中国の占める割合は40.8%(2020年)となり、中国は豪州にとって最重要の貿易パートナーとなった。同様の傾向は豪州の主要輸入先国の推移(図2)においてもみられる。中国は2000年代半ばに日本・米国を易々と抜き去り、2020年現在、全体の28.8%を占める。また、2000年代には一国が突出して高いシェアを持つことはなかった豪州の貿易相手は、2010年代以降、中国の存在感が他と比較して圧倒的に大きくなったことも分かる。一方、中国の主要輸出入先国の推移(図3、図4*9)をみると、足元2020年でも豪州との貿易額は輸出では2.1%、輸入では5.1%を占めるに過ぎず、中国の輸出先国に占める割合の順位は10位以下である。過去20年、豪州が世界の市場・世界の工場として急成(図1)豪州の主要輸出先国の推移01,2001,00080060040020020012002200320042005200620072008200920102011201220132014201520162017201820192020(億米ドル)(年)(出典)UN Comtrade Database中国日本韓国米国40.8%(2020年)(図4)中国の主要輸入先国の推移02,5002,0001,5001,00050020012002200320042005200620072008200920102011201220132014201520162017201820192020(億米ドル)(年)(出典)UN Comtrade Database日本韓国米国豪州5.1%(2020年)(図2)豪州の主要輸入先国の推移070060050040030020010020012002200320042005200620072008200920102011201220132014201520162017201820192020(億米ドル)(年)(出典)UN Comtrade Database中国米国日本28.8%(2020年)(図3)中国の主要輸出先国の推移06,0005,0004,0003,0002,0001,00020012002200320042005200620072008200920102011201220132014201520162017201820192020(億米ドル)(年)(出典)UN Comtrade Database米国香港日本豪州2.1%(2020年)42 ファイナンス 2022 Mar.SPOT

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