ファイナンス 2022年3月号 No.676
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がそれぞれのカウンター・パーティになることでそのリスクが軽減されます*17。円債市場では日本清算クリアリング機構(Japan Securities Clearing Corporation, JSCC)がその役割を担っていますが、金融危機時に安定的な機能を果たしたこと等を理由に近年、その重要性が増しています(CCPについては今後の論文で丁寧に説明します)*18。なお、バイラテラル・レポはSCとGCレポともに取引されますが、トライパーティ・レポはGCレポが取引されています。また、バイラテラル・レポでも、CCPを通じてクリアリングがなされるレポもあります*19。この場合、前述のFICCが有するDelivery-versus-Payment(DVP)サービス*20により決済がなされます。後述しますが、SOFRを算出する際、バイラテラル・レポの中でも、このFICCを経由した取引が考慮されています。ちなみに、FICCのレポとしては、近年、スポンサード・レポのプレゼンスが上がっていますが、スポンサード・レポについてはBOX 1を参照してください。図表7はARRCのレポートに掲載されている米国レポ市場の概要を表示しています。ここまで読まれた読*17) 原理的には中央清算機関がデフォルトする可能性も排除できません。CCPの詳細については今後の論文で議論します。*18) なお、DTCC(Depository Trust &Clearing Corporation)は米国における証券保管振替機構と証券決済を担う機関を指しますが、FICCはDTCCの完全子会社です。*19) ARRC(2018)では、「As with the tri-party repo market, there is a segment of the bilateral repo transactions that is centrally cleared through a CCP, the bilateral Treasury repo transactions cleared through FICC’s Delivery-versus-Payment(DVP)service. Unlike the GCF market, DVP trades are not necessarily blind brokered.」(p.9)としています。*20) DVPとは、Delivery Versus Paymentの略で、証券の引渡し(Delivery)と代金の支払い(Payment)を相互に条件を付け、一方が行われない限り他方も行われないようにすることをいいます(ここでの説明は日銀の説明を出所としています)。https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/kess/i17.htm/*21) プライム・ブローカレッジとは、「ブローカー・ディーラー(株式売買仲介業)の子会社を通じて、顧客にさまざまなサービス、具体的には証券の保管管理、決済、現金の管理、証券の貸出、資金調達、(リスク管理、税金、その他の会計サービスなどの)情報提供を行う」(ダフィー、2011)ものです。要は、ヘッジファンドが取引の執行等に必要な主要なサービスを証券会社が提供するサービスですが、その主要サービスの中に資金調達(レポ取引)も含まれています。オーウェン(2002)は、証券会社のプライム・ブローカレッジがヘッジファンドを創設するのを容易にすることでヘッジファンド業界の成長に寄与したとしています。筆者の印象ではありますが、現在、ヘッジファンド向けのプライム・ブローカレッジといった場合、証券会社がレポのサービスを提供するという意味で使われることも少なくありません。*22) この値はFRBが提供するリバース・レポ・プログラムの値を除いています。同プログラムについてはBOX 2を参照してください。者にとって、すでにこの図の見通しは良くなっているとおもいますが、上段にトライパーティ・レポがあり、MMFや証券の貸し手などがトレーダーのカウンター・パーティとして描かれています。また、トライパーティ・レポの特殊系であるGCFレポは証券会社間で用いられるものとして描かれています。一方、図表7の下段にはバイラテラル・レポが記載されています。バイラテラル・レポの出し手としては運用会社、借り手としてはプライム・ブローカレッジの顧客などが描かれています。プライム・ブローカレッジとはファンド・マネージャーから取引の指図を受け、証券取引の執行等を行う業務を指しますが、ヘッジ・ファンドは証券会社が提供するプライム・ブローカレッジ・サービスなどを通じてレポ市場に入ってきます*21。ARRC(2016)によれば、2015年においてトライパーティ・レポはおおよそ1.5兆ドルの市場規模があります。そのうち、GCFレポの市場はおおよそ3,000億ドル*22です。ARRC(2016)ではバイラテラル・レポの市場を把握することは困難であることを指摘していますが、その市場規模として1.7兆ドルという数図表7 米国市場におけるレポ市場の全体像証券会社のトレーダー(マーケット・メイカー) 投資家・MMF・証券の貸し手・その他トライパーティ・レポ 投資家・運用会社・その他バイラテラル・レポ 借り手・プライム・ブローカレッジの顧客・その他GCFレポ(出所)ARRC(2016)より筆者作成 ファイナンス 2022 Mar.33SOFR(担保付翌日物調達金利)入門SPOT

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