ファイナンス 2022年3月号 No.676
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ス・レポを行っているといえます(ちなみに、この場合、読者は7年国債を借りてきて顧客に販売しているので、読者は7年国債のショートのポジションを作ったといえます)。GCレポとの比較でいえば、GCのレート(GCレポ・レート)がレポ市場全体の運用と調達の需給で決まるのに対して、SCのレート(SCレポ・レート)は個別証券の需給関係で決まる点が異なります。3.4  バイラテラル・レポとトライパーティ・レポ*15このようにレポとは債券(特に国債)を担保とした資金のやり取りを指しますが、米国のレポ市場では先ほど説明したGCレポとSCレポという違い以外に、バイラテラル・レポとトライパーティ・レポ(第三者間レポ)という重要な違いがあります。SOFRの構築方法を理解するには、この違いも理解する必要があります。バイラテラル・レポとは例えば筆者と読者の間で相対取引するものであり、これまで説明したイメージになります。米国のレポは即日決済が求められるなど参加コストが大きいことから、バイラテラル・レポの参加者は証券会社などに限定されていました。そのような中、クリアリング・バンクが事務処理などを負担することで多くの主体による参加を可能にしたものがト*15) ここでの記述はARRCの資料などに基づいていますが、宮内(2015)も参照としています。より詳細を知りたい読者は宮内(2015)等を参照してください。*16) ここの説明は宮内(2015)を参照しています。GCFレポは1998年から導入されています。ライパーティ・レポです。図表6はトライパーティ・レポのイメージを示しています。ここではマネー・マーケット・ファンド(Money Market Fund, MMF)がクリアリング・バンクを通じてトレーダーに資金融通するイメージを示しています。このように、レポの担保管理をする銀行が間に入ることで、MMFなど広い投資家がレポ市場に参入することを可能にします(MMFは短期金融市場で運用する米国の投資信託ですが、MMFの詳細は次回の論文で丁寧に説明します)。なお、この仲介となるクリアリング・バンクはJPモルガンとバンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)による寡占市場となっており、これらの銀行はしばしば清算を担うことからクリアリング・バンクと呼ばれています。さらに、トライパーティ・レポの変形として、取引の間にFixed Income Clearing Corporation(FICC)が中央清算機関(Central Counter Party, CCP)としての機能を果たすGCF(General Collateral Finance)レポがあります*16。FICCは米国債等の中央清算機関ですが、特定の金融機関が媒介するのではなくて、中央清算機関が間に入ることで、安定的な決済を可能にしています。もし相対で取引した場合、カウンター・パーティがデフォルトした場合、取引の履行がなされないということが起こりえるのですが、中央清算機関図表5 SCレポ市場の概要7年国債資金提供SCレポ市場国債の店頭市場国債のトレーダー国債を保有する金融機関担保の提供7年国債7年国債国債の売却図表6 トライパーティ・レポを通じたトレーダーのファンディングトレーダークリアリング・バンク資金提供MMF資金提供(出所)ダフィー(2011)を参照に筆者作成担保を提供32 ファイナンス 2022 Mar.SPOT

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