ファイナンス 2022年3月号 No.676
35/102

ためにはその資金調達をしなければなりません。図表4のように、財務省が国債を発行した場合、読者はそれを購入して在庫として保有するわけですが、前述のとおり、読者は国債を購入することになるため、国債を担保に資金を調達することができます。図表4の左側に記載しているとおり、トレーダーは国債を担保として提供する一方で、短期的な資金を調達します。このように国債を担保として資金を調達することをレポといいました。実は、この動きを逆から見た場合(図表4において「短期資金の運用者」の視点で見た場合)、国債を担保にとってお金を貸すことを意味しますが、これを「リバース・レポ」といいます。リバース・レポは、レポの反対取引として定義する点が独特ですが、いわば運用サイドから見た場合の短期運用を意味します。タックマン(2012)ではこのような表現を使う背景には、「資金の出し手が特定の債券の借入れを強く望んでいることを強調する意味であえて使われている」(p.319)と指摘しています*13。リバース・レポといわれると「逆」という意味を含み、最初は慣れない方もいるかもしれませんが、リバース・レポという表現は米国市場ではオペレーションでも用いられるなど、金融市場で非常に良く使われる表現です(FRBが実施するリ*13) なお、タックマン(2012)では「キャリー」をレポのチャプターで初めて定義しています。キャリーの定義にレポ・レートが用いられるからです。*14) ここではわかりやすさを重視するため7年としていますが、通常は国債の回号まで指定することが一般的です。なお、年限のみを指定する取引は、「条件付きGCレポ取引」等と呼ばれることもあります。バース・レポ・プログラムについてはBOX 2で説明しています)。3.3 GCレポとSCレポ先ほど「特定の債券」という表現を用いましたが、レポ取引は特定の債券を指定するかどうかで大別されます。前述のとおり、読者が資金調達のために国債を担保として使う場合、国債のような安全性の高い債券である限り、どのような債券が担保であるかはさほど意識されません。このように担保を特別指定しない取引をGC(General Collateral)レポといいます。一方、レポ取引にはSC(Special Collateral)レポという取引もあります。例えば、服部(2020)で説明したような先物と国債の裁定を行う場合には特定の国債(例えば7年国債*14)が欲しいという状況が生まれます。図表5がSCレポ市場のイメージを示していますが、例えば、読者が特定の国債(例えば7年国債)の買い注文を受けた場合、在庫に7年国債がなかったとします。この場合、読者は他の証券会社から7年国債を購入して、顧客に売却するという方法もありますが、資金を出して7年国債を借りてきて、それを販売することもできます。この場合、トレーダーは国債を受け取る一方、資金を提供するため、先ほどのリバー図表4 レポ市場の概要とレポ(リバース・レポ):国債入札時をイメージ国債国債資金提供GCレポ市場<トレーダーからみるとレポ><資金の出し手からみるとリバース・レポ>財務省国債のトレーダー国債の発行短期資金の運用者(例:MMF)国債を担保に提供図表3 各国におけるRFR米ドル英ポンドユーロスイスフラン日本円特定されたRFRSOFRSONIA€STRSARONTONA担保の有無有担保無担保無担保有担保無担保期間翌日物翌日物翌日物翌日物翌日物検討体ARRC(Alternative Refernce Rates Committee)WG on Sterling Risk Free Reference RatesWG on Euro Risk Free RatesNational WG on Swiss France Reference Rates日本円金利指標に 関する検討委員会事務局FRB NY連銀BOE・FCAECBSNB日本銀行(注記)NY連銀はニューヨーク連銀、BOEはイングランド銀行、FCAは金融行為規制機構、ECBは欧州中央銀行、SNBはスイス国立銀行を指します。(出所)金融庁資料より抜粋 ファイナンス 2022 Mar.31SOFR(担保付翌日物調達金利)入門SPOT

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る