やはり、こんなに債務があって日本は大丈夫なのだろうかということが心配です。将来世代の立場も考慮した長期的な我が国の債務持続可能性について関心があります。2年間、財務総研で勤めたわけですが、職場のパソコンを開くと「希望ある社会を次世代に引き継ぐ」とポップアップが出てくるわけです。これに感化されたのかもしれませんが、やはり政治に声が届かない将来世代のことは誰かが頑張って意識して議論していかなければならないと思います。財政の持続性は、金融政策を機動的に行う前提条件にもなります。財政赤字によって発行された国債を日銀が購入しなければ金利が安定しないことが常態化すると、いわゆる財政赤字によって貨幣量が決まる状態(debt monetization)になってしまい、長期的な視野で見ると様々な経済的代償が生じることが懸念されます。また、短期国債の発行割合が増えている点にも注意を払っています。例えば、海外ではインフレ懸念が強まっていますが、アメリカの利上げは各国経済へ波及するので、為替や株価等の変動を通じた日本経済へのマクロ的な影響についても関心があります。こういった将来の様々なリスクを考えれば、日本でも機動的に金利を引き上げるという対応が必要になる可能性は排除できないと思いますので、そういった対応が制約されないように、政策面でとり得る様々な選択肢を、将来に残しておくことは、現役世代の責務だと思います。コラム 小枝准教授の今後の研究の関心当たり前なのかもしれませんが、財務省は「調整」をする組織だというのがとても新鮮でした。そのためには、独自の分析を積極的に提示するというより、実務の最前線でのいろいろな考えや見方を把握し理解することがとても重視されていると感じました。一方、大学では、アカデミックの世界というのは最先端で常に動いていますので、今までの学術研究の成果を理解したうえで独自の研究を提示することに重きが置かれます。この違いは大事なことだと思いますし、そのような違いを踏まえて、アカデミアである私にどういう働きができるのかを考えました。その中で必要な役割というのは、これは財務総研が組織として引き続き活躍してほしいところでもありますが、実務家と学術研究者の世界を歩み寄らせるということだと思いました。財務総研の役割の一つとして、世の中の議論に対して、整合性のある学術的観点をわかりやすく提供することがあると思いますし、その一つの方法として今回のFRの企画はその一例だと思います。また、財政経済理論研修のように、経済学についての理論と実証についての研修を実施することも、学術研究者が行う研究とはどのようなものなのかということを知る方法として良いものだと感じています。本来的には、若い人だけではなく、より年次の高い方にも受けてもらいたいものです。アカデミックの方は、日ごろ、自分の研究で精一杯になってしまっています。しかし、自分の研究の話であれば喜んで話されるので、ぜひどんな人がどんな研究を行っているのか、レーダーを張っていただいて、話をする機会を確保してもらいたいと思います。コラム 2年間勤務する中で見えた 財務省・財務総研、財務総研に期待することとは?財務総合政策研究所POLICY RESEARCH INSTITUTE, Ministry Of Finance, JAPAN過去の「PRI Open Campus」については、 財務総合政策研究所ホームページに掲載しています。https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/index.html84 ファイナンス 2022 Feb.PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 4連載PRI Open Campus
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