で、できるだけ良い結果を出さなければならない、その日その時、常に最善を尽くしてチームとしてパフォーマンスを上げることを考えていかないと、組織の永続性はないし、最終的には日本国民にとって良いことになりません。12.レジリエンスの3要素:適応性レジリエンスの3要素の3番目は「適応性」です。これは「環境変化へのシステム・組織の適応能力」です。ミスが正しくフィードバックされて修正できる系統が機能しているかどうかです。1982年に日本航空の羽田空港沖での逆噴射事故が発生しました。インシデントが正しくフィードバックされて修正できる系統が当時の日本航空では全く機能していませんでした。一方、ジョンソン英首相は、英国で新型コロナウイルスが広がり始めたとき、専門家からの助言に基づいて集団免疫策を採用することにしました。60%、70%の感染があれば集団免疫ができるので特に対策をとらないということにしたのですが、思いのほか新型コロナウイルスの毒性が強く、死者が増えてしまう事態になりました。ジョンソン首相は直ちに「私の施策は間違っていた」と責任の所在が自分にあるとしてミスを認め、翌日からロックダウンに切り替えました。ミスが正しくフィードバックされて修正できる系統が機能している英国議会政治の成熟度を見るような気がします。我が国を取り巻く内外の環境がどんどん変わっている中で、組織は正しく適応しなければいけません。なぜなら、レジリエンスが形成されないからです。サイバーテロ、食糧危機、さらなるパンデミック、こうした想定外の事態に対して、私たちはミスを正しくフィードバックして修正できる系統を構築していかなければいけません。日本人は「不退転の覚悟」が大好きですが、「適応性」は間違ったことが正しくフィードバックされて修正されることですので、「不退転の覚悟で臨みます」というのは今の時代ではナンセンスです。Amazon社は1999年以降様々な事業を立ち上げましたが、思うようにいかなかった事業は数年でクローズしています。その時の判断で「いける」と思ったけれども、やはりだめだと判断したら、それを正しくフィードバックして修正しています。13. 「心理的安全性確保」のために重要なことここで大事なのは「心理的安全性」と「名誉の保証」です。その責任者を罰するとか一線から外すことではなくて、どんどんチャレンジしてください、ミスは仕方がないよね、とチャレンジしたことを評価することが重要です。失敗から学ぶ、Lessons Learnedを定式化していくことが非常に大事です。私たちも健康管理でいろいろな失敗をしてきましたが、その都度分厚いLessons Learnedをまとめます。失敗から何を学んだのかというLessons Learnedを徹底的にやって、二度と同じ間違いをしないようにナレッジを蓄積していきます。ナレッジが蓄積されれば、結果としてうまくいかなかったとしても私たちが名誉を失うことではない、という組織の風土が大切です。「心理的安全性」を確保するために、管理者が心得えておくべきことが2つあります。一つ目は、偉い人の権力の使いどころは何かということです。職員が、他人を脅したり、他人の尊厳を毀損するパワハラやモラハラをしているのを目撃した時、ここが権力の使いどころです。ふだんは穏やかだったとしても、倫理にもとるようなことがあったら、それはいかんと言って、真っ赤になって権力を使って真剣に叱責することです。二つ目は「ガキのように言い合える風土形成」です。育児で早めに退社する女性に対して、残っている人たちが陰口をたたくのを見かけることがあります。陰口を言われている人たちもなんとなく帰りづらそうで、大変雰囲気が悪くなります。その時に大きな声で「そういうことを言ってはいけないよ!」と同僚に向かってはっきり言うことです。それはおかしい、と「ガキのように言い合える風土形成」これが「心理的安全性」を確保する上で大変重要です。この2点を皆さんの組織の風土形成として行っていただければ、心理的安全性が確保され、ミスをしたと76 ファイナンス 2022 Feb.連載セミナー
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